「柔道の強さ」はイコール「フィジカル面の強さ」なのか

※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

 ここのところちょこちょこ忙しかったり、挙げたエントリーもおいしいもの紹介的なのばかりでちょいとブログの書き方忘れてる感じがするので、リハビリがてらに絡みエントリーしてみる。

見物人の論理: サッカー界はなぜ鈴木桂治を見逃したのか。
http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2008/09/post-e14e.html

 柔道の無差別級でも優勝できる鈴木桂治を例に挙げて「日本の選手もフィジカル面で海外並みになっているのでは」というお話。これには賛否両論あったみたいで、寄せられた意見に対して答える続きエントリーも挙がってました。

見物人の論理: サッカー界はなぜ鈴木桂治を見逃したのか/追記。
http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2008/09/post-987f.html

 ただ、コメントも含めて両方のエントリーとも、サッカーの視点はあっても肝心の柔道の視点がなかったように思えるので、高校時代は柔道に明け暮れていた私が柔道としての視点で語ってみたいと思います。

 で、結論から先に言うと、残念ながら柔道強くてもフィジカル面が強いはイコールになりません。これに関しては柔道経験ある人だったらほぼ総意なんじゃないかな。

 柔道やったことない人からすると柔道なんてパワーと体重重視の格闘技に見えるんだろうけど、実際には非常に物理的というか論理的に練られた格闘技です。自分が柔道にハマったのもそこが理由でした。

 例えば足技を例にとって説明すると、じぶんが片足を上げた状態を想像してみてください。その片足が挙がっている方向に引っ張られたらとりあえず転びそうになりますよね。で、普通は残った足でケンケンしたり、上半身を使ってバランスをとったり、もしくは転びながらも手をついて着地したり。

 ところが柔道の場合はこのときに両腕もロックしているから、上半身でバランスを取ることもできずにその場で落ちていくしかない。これはどんなにパワーがある人であっても同じことをされたら転ぶはず。いわゆる「柔よく剛を制す」というのは理想論に聞こえるけれど、実は柔道の神髄を端的に表している名台詞だと思います。

 個人的に一番好きな投げの理論は背負い投げと小内巻き込みなんだけど、文章で書くのは大変なのでここでは割愛。興味ある人はこんどかけてあげるのでぜひお申し出ください。

 もちろん相手の動きを制すにはそれなりのパワーは必要だけど、それは相手をはるかに上回っているほどのパワーでなくともよく、引っ張っても押してもびくともしないほど露骨なまでの差がない限り、そのくらいの動きは十分にできるもの。こうした技術に長けているからこそ日本は強いのであって、柔道の強さを持ってフィジカルが強いとはとても言えないと思います。

 前述の鈴木桂治も足技が非常に華麗で、重量級の選手をぽかぽか転ばせまくってました。これはパワーの問題ではなく相手のバランスをうまくコントロールできるセンスにほかなりません。さらに言うと、日本の選手で強い人は相手を華麗に投げているシーンを世界大会クラスでよく見ると思いますが、海外の選手だと投げというより裏投げ(相手の技を受け止めて投げにつなげる技。バックドロップみたいな感じ)だったり両手刈り(相手の両足にタックルする)技が多く見られるのは、こうした技は覚えるのも簡単でパワー重視の技だからです。

 ちなみに個人的には柔道よりも相撲の方がフィジカル要素が強いと思います。もちろん相撲にもたくさんの技があるけれど、狭いエリアから追い出されたら終わり、転んだら終わりというのは柔道以上にパワーの影響が出やすい。そんな相撲の世界は、今見ると外国人力士ばかりが台頭していて昔ほど日本人が強くはない状態であることを見ると、日本人はとてもフィジカル強くなったとは言いがたいなあと思ってしまいます。千代の富士みたいな力士がまた出てこないかなあ。

 なお、前述のエントリーにはこんな興味深いコメントがありました。

>> 格闘技には階級制があるのだから、好成績は参考にならない

?以前雑誌で(近代柔道だったかな?)同階級の日本人・ヨーロッパ人選手の筋力を測定したところ、日本人選手が大幅に背筋力などの面で下回っていた、という記事を目にした記憶があります。つまり、同程度のサイズにおいても我々はフィジカルにおいて歴然としたハンデを背負っている訳です。
にもかかわらず、一定の成果を修めている柔道がサッカーにおけるフィジカルハンデに何らかの解を与えてくれるという仮説はあながち外れではないと私も思います。

 まさにその通りだなあ。自分も部活の頃、サッカー出身のパワフルな後輩がいて、腕相撲を初めとしてほとんどの面でフィジカル的に負けてたんだけど、柔道で負けることは(乱取りとかをのぞけば)ほとんど無かった。ちなみに一度柔道場の真ん中に円を作り、「外に出たら負け(相撲)ルールでの柔道」「外に出ても負けないけど基本は狭いエリアで逃げ場のない状態で戦うルールの柔道」という遊び的な練習をしたとき、前者では後輩に速攻負けてしまい、その後輩がたしか成績一番よかったんだけど、後者では自分を含めた同期がポンポンその後輩を投げてしまってランキングも最下位かそれに近いとこまで落ちてしまった。あのときにやっぱりパワーじゃないよなあと痛感したものです。

 で、一定の成果を収めた柔道がサッカーに何らかの解、というのもその通りなんだろうけど、サッカーで求められるフィジカル面というのはきっと相撲に近いパワー重視の側面があると思うので、ここはあまり役に立たない気もします。パワー以外を技術で補える、という点については、サッカー素人ながらも中村俊輔のフリーキックとか川口の神懸かり的セーブとかが1つの答えなんじゃないかなあ。

 あと余談ですが最近はレガシーなブログシステムであるところのトラックバックはあまり使ってなかったんですが、このエントリ読んでちょっと反省してトラックバックすることにしてみましたはい。

トラックバックについてちょっと言っておこうと思う – 頭ん中
http://www.msng.info/archives/2008/09/post_744.php


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