「匿名掲示板」というくくり方について

※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

本筋に関係ない話題なのであまり引用とかはしないけれど、前から気になっている部分だったのでちょっとエントリしておく。

「匿名掲示板」というサービスは、往々にして巨大掲示板サービスであるところの2ちゃんねるを指していることがほとんどですが、こういう表現されるときというのは匿名で人を攻撃したり誹謗中傷したりと、悪の存在として用いられることが多い。たしかに2ちゃんねるはそういう側面もあるけれど、そういう見方で全体をくくってしまうと、2ちゃんねるならではの良さというのもまた見えてこないと思うのです。

たとえば自分の場合、新製品を購入すると必ずと言っていいほど2ちゃんねる検索で型番を検索し、同じ製品を買った人の情報を集めます。

2ちゃんねる検索 – 最新の話題を探そう
http://find.2ch.net/

もちろん製品のジャンルによって性格の違いはでるけれど、こういうレビュー系のスレッドというのは思ったほど荒れない。いやもちろん荒れることはあって、数十レスくらい罵倒の仕合いというのもよく見るけれど、全体的に「荒らしはスルー」という空気ができあがっているから、少しすればそういう罵倒も収まってちゃんとした流れに戻る、というのが定番だと思います。まあ、いわゆる信者系の多い製品はかなり荒れがちですが・・・・・・。

何より2ちゃんねるを見るのはそのまとめ力が比類ないからで、同じ製品のスレッドを「Part2」「Part3」と重ねていくことで、いわゆる「>>2-10」あたりのまとめがどんどん充実していく。これは1つの製品やジャンルに対して1つの掲示板のみで会話を続けている仕組みだからこそであって、なんというかラーメン屋の秘伝スープのように時間をかけて熟成されていく感があります。

製品レビュー系でいうとカカクコムもありますが、あれって1製品についていくつもの掲示板を作れるため、初心者の質問とかは「説明書読めよ!」で終了するパターンをよく見る。実際に2ちゃんねるとカカクコムを両方読んでいると、カカクコムのほうが冷淡な印象すら受けます。

もちろん2ちゃんねるというのも「ググレカス」で終了、というパターンもあるけれど、掲示板が1つのスレッドで続いていくがゆえに、親切な人が初心者にもきちんと答えてくれる、ってパターンも多い。匿名掲示板として悪の代表的に言われる2ちゃんねるが、実際にはきちんとコミュニケーション取れているという側面も、実際に利用している立場として感じるところです。

一番2ちゃんねるを利用する機会が多いのはゲーム攻略の時。どうしてもゲームが進めないときや、シナリオの感想を聞きたいとき、ゲームをコンプリートしたい時なんかは攻略サイト使うんですが、ゲーム系はアフィリエイトの巣窟なので、Googleで検索してもまともにいいサイトがひっかからない。

ところが2ちゃんねるでゲームタイトルを検索し、そこで紹介されているまとめサイトというのは、2ちゃんねるのユーザーがきちんと更新しているまとめなので内容が充実しているんですな。もちろんそういうサイトはのちのち検索順位が上がってくるけど、発売直後なんかは発売前からアフィリエイト狙いのブログがたくさんあるためになかなか見つけにくい。

最近いいなと思ったのは、Wii「アナザーコード:R」のネタバレ考察スレ。クリアしたからこそ気になるストーリーの矛盾や説明不足の点、キャラクターの今後について検討していくスレで、ネタバレ満載だけど読んでてとてもおもしろい。中にはゲーム内で説明されていることに気がつかないコメントもあるけど、それをバカにするんじゃなくちゃんと受け止めてコミュニケーションが成立しているあたりもすばらしいと思います。

アナザーコード:R 記憶の扉ネタバレ考察スレ
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/famicom/1234148975/

もちろん、こういうスレッドがある一方で、誹謗中傷ばかりしていたり、匿名の人物をスレッド名にしてたたくと言う悪質なスレッドがあることも現実です。ただ、だからといってそれをもって「2ちゃんねるは悪」とまとめてしまうのは、「ブログってスパムでしょ」とまとめてしまうのと大差ないと思いますし、個人的に2ちゃんねるは日本の中でもきちんとコミュニケーションが生まれているネットサービスとして非常にすばらしい存在と思う次第であります。

もう1つ、システム的な面でいうと、前に2ちゃんねる管理人も言ってましたが2ちゃんねるってのはそれほど匿名なシステムではありません。「名無しさん」という名前にだまされがちですが、すべてのユーザーにはコンピュータごと個別のIDが割り当てられますし、携帯電話も端末IDで完全に特定される。また、自分が特定の人物であることを証明したい場合はトリップ(◆のマーク)をつけるという方法もあります。

むしろ他のレンタル掲示板サービスとかだと、名前こそハンドルネームが賑やかだけどそれぞれのIDを表面的にはむすびつけられなかったりする場合もあります。いろんな名前があるようで実は同じ人がいくつも書き込んでる、なんてケースもあるやもしれません。単にデフォルトの名前で書き込むから匿名のように見えるけれど、見た目の名前が違うだけのシステムよりはきちんと誰かを特定できているし、その上で全員が名前を必要とされないシステムだからこそ気軽に書き込め、気軽に質問できるという側面もあるでしょう。

重ね重ね2ちゃんねるのすべてを肯定するわけではなくて、かなり悪質なスレッドもありますし、それが目立って見えるというのもわかりますが、一部を見て全体をレッテル付けしてしまうのは「だから○○人は××だ」とかいう表面理論に終わってしまいがちでさみしいなと思う次第です。


「匿名掲示板」というくくり方について” への5件のフィードバック

  1. カイさん、どうもです。
    カイさん以外にも2ちゃんねるファンの友人はいっぱいいるけれど、友達だからといって何から何まで合意できるわけではない、っていうのが健全な関係ですよね。

    というわけで、私の意見を書かせてもらうと、私の見方は正反対で
    一部いいところがあるからといって、そこだけにスポットライトを当てて
    それをもちあげていいものか、というベクトルで見ています。

    例えば、確かに製品探しに有用な情報も多いかもしれないけれど、
    その製品の説明をするのにあたって、みんな匿名で誰に責められるでもない、どうせお面被って誰だかわからないから、多少ひどい言い方/やり方でもやっちゃえー、みたいなノリで、汚い言葉を使いまくっている。
    そういうサービスを、例えば自分の親に「製品情報を探すならここがいいよ」とか、自分の子供に「ここがいいよ」と勧められるかどうか。

    勧めたとして、そうすることによって、将来の日本もずっと、その状態であることが果たして本当にいいことなのか、というポイントです。

    同じ情報を流通する、もっと健全な別のサービスがあった方がよっぽどいいんじゃないか、という話しです。

    私は2ちゃんねる文化=かっこ悪いネットオタクの文化として、健全な暮らしをしたい人、異性にもてたい人や、パソコンをOFFにした世界でも有意義に過ごしたい人にとっては、まったく意味のないメディアになっていってくれればいいと思っています(まあ、今もそうだとは思っていますが)。

  2. コメントありがとうございます。

    >友達だからといって何から何まで合意できるわけではない、っていうのが健全な関係ですよね。

    こういっていただけるのがなによりありがたいことです。その上で私の意見としては、どんなものも1つの側面では推し量ることはできなくて、いいところも悪いところもある、というスタンスなので、逆に1つの側面を持ってすべての側面をまとめてしまう、ということができないんですね。

    子供の問題に関しては自分は実感ありませんが、「ここは言葉が汚い」と見せないよりも、何が汚いことで何がいけないことなのかをきちんと教え込んだ上で、「2ちゃんねるはこういう場所なんだ」と教えてあげるほうがいいのかなと。理想論かもしれませんが、健全なものだけで育てようとしてもどうしても子供は好奇心や友達の情報からいろいろ見てしまうでしょうし、触れない教育よりも触れても大丈夫な教育、のほうが私には理想です。あくまで理想論でしかありませんので実現可能かどうかはまた別ですが。

    もちろん2ちゃんねる全体を諸手を挙げておすすめできる存在ではないのはその通りですので、どちらかというと2ちゃんねるみたいなパワフルなコミュニティをもっと誰もが触れやすい存在になるといいな、というのが私の考えです。

  3. たしかに「汚いもの」も見せた方がいい論は賛成。
    ただし、例えば22世紀とか、もっとずっと先の時代にどうなっていて欲しいかという視点で言うと、カイさんの一番最後の結論のように
    「どちらかというと2ちゃんねるみたいなパワフルなコミュニティをもっと誰もが触れやすい存在になるといいな」で、他のもっと健全なコミュニティーが、同じだけの熱気をもってくれるのが理想だと思っていて、そうなるための一歩として「え〜、2ちゃんねるやっているの。かっこわる〜い」というコンセンサスを、まず大人が持って、子供にもそうしたものが生理的レベルで伝わっていけばいいな、と思っています。

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