昨年は割と映画見たのにあんまり感想のこさなかったなーという反省もあって今年はちゃんと記録に残そうと思う、というのを新年の目標におきつつ、映画の日効果を狙って前から気になっていたゴーン・ガール見てきました。
映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト
http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/
夫婦やカップルで見ないほうがいい、という評判だけ先に聞いていてどんなもんじゃい、という心づもりで見に行ったんだけど、別に夫婦とかカップルあんまり関係なかった。後述するけどあれを見て夫婦やカップルの危機を覚えたという人はどこに恐怖を覚えたんだろう、と逆に気になった。
映画の見方は人それぞれですが、この映画に感じたのは夫婦の話というよりもかわいそうなエイミーの物語だなということ。母親が自分を題材に「Amazing Amy」なんていう本を書き、それが大ヒットしたために常に本と自分を比べられ、完璧な自分でいることを強制される。けれど自分はそんなに完璧じゃないという違いに悩みつつそれでも完璧であろうとするがあまり、自分と付き合う相手にも完璧を追い求める。その結果として彼女は自分も相手も完璧であることがすべてにおいて優先され、結果としてサイコ的な行動も平気で取れるような人間になってしまう。
舞台は浮気した夫とそれを知って失踪した妻ではあるものの、本質的にはエイミーがこれほどまで完璧にこだわる性格でなければすべての事件は起こらなかっただろうし、見ていても娘を自分の仕事の道具として使う母と、その偏った愛情で心が壊れていくエイミーばかりに目がいってしまった。
その後の夫婦生活の不和も、エイミーの性格をさておきとしても、夫婦の不和というよりそもそもコミュニケーションの問題だったり、自分たちではどうしようもない世の流れにたまたま巻き込まれてしまったというだけの部分も多い。
最初は幸せだった結婚も2人が失業することでぎくしゃくしはじめますが、失業に関してはどうしようもないし夫婦というものがそろって失業すると怖いね、ということではあれど夫婦の本質的な話ではない。失業によってお金に困り、妻が持っていた財産を勝手に使ってしまうことで夫が怒り、一方で夫が自分の母の介護のために引っ越したことを妻は快く思っていないというのが2人がすれ違う最大の要因ですが、こういう人生における大事なことを相談もせず勝手に決めちゃいかんよね、というのは夫婦がどうとかいう話とは別だと思う。
その後夫は若い女と浮気をし、それを妻が目撃してしまったことが妻を狂気に走らせるきっかけではあるのですが、浮気は悪いという大前提はありつつ、すでに妻から心が離れていて離婚を考えており、若い女は浮気を超えて新しいパートナーとしてちゃんと考えていたということを踏まえると、順序が違うとはいえ情状酌量の余地はあるかなとも思う。
つまりそもそも妻の性格が大きな問題であることと、それに加えて2人のコミュニケーション不全が引き起こした問題であって、失業すると大変、大事なことを決めるときはちゃんと相手と相談しよう、浮気はするもんじゃないという普遍的な話はあれど、夫婦ならではの怖さという話ではないかなと思った。
どこか1つ歯車を変えられるなら、やはり妻のお金かな。大金を親にあげてしまったことではなく、相談する前にあげちゃったよという報告でしかなかったころから2人がギクシャクしたことを考えると、人生における大事な計画はちゃんと相談しようね、そしてそれ以上に子供を育てる時に完璧を強要しちゃいけないよ、ということを感じた映画でした。
そんな脇の話はさておき映画そのものの楽しさでいうとさすがデヴィット・フィンチャーというか、かなりの長さなのに時間を感じさせずストーリーに引きこまれてあっという間に終わっていた。特に途中から妻の視点に移るあたりは一気に話に引きこまれたし、夫を殺人犯にしたてあげて自分は失踪、で終わるかとおもいきやまだまだストーリーがどんでん返しを続けるジェットコースター感もさすがというかんじ。
結局妻の完璧な計画は、うっかり大金を所持していることを知られてしまうことで台無しになり、それがなければあの殺人は起きなかったのに、と思いつつ、失踪がうまくいきすぎて気が緩み、宿泊先の知らない人とコミュニケーションしてしまうあたりの気のゆるさが、結局エイミーは完璧ではなかったねというメタな展開になっているのも面白かった。
夫は妻の失踪中に押しかけてきた浮気相手を断り切れないという本当にダメ男ですが、心の底から愛せなくなった妻なのに、自分の子供が生まれるということを知っただけで人生の覚悟を決めて手をつなぐという点では、ダメ男ながらも最後はふんばった。ああいう終わり方させるフィンチャーのダークさも好みなので映画としての評価は高いです。ただ、セブンやファイトクラブのような「えええええええ!」という裏切られ方はなかったかな、という点でフィンチャー作品の中ではさほど高い評価ではないかなというのが着地点でした。