カテゴリー: 映画

  • 【ネタバレ選択制】シン・ウルトラマンがウルトラ好きには最高の映画だった

    【ネタバレ選択制】シン・ウルトラマンがウルトラ好きには最高の映画だった

    結論から言うと最高の映画でした。上映中何度も心の中で「最高!」と叫んでました。

    ただこれは自分が無類のウルトラマン好きだからこそで、ウルトラマン好きじゃない人にどこまで響くのかなーというのは疑問。自分にとってこの面白さの根本は「ウルトラマンが好き」なことにあるので、ウルトラマン好きじゃないと響かないというか、面白いとおもったとしても、ウルトラマン好きが体験できる面白さとは違うものなんだろうなと。マトリックス3部作見ずに最新作「マトリックス レザレクションズ」見るようなものなのかな。そのあたりウルトラシリーズあまり見てないけどシン・ウルトラマン見た人の感想を聞きたいところ。

    「シン」シリーズということでシン・ゴジラと比較されがちな本作ですが、個人的にはシン・ゴジラより面白かった。映画そのものの面白さとしてはシン・ゴジラのほうが上だと思うのですが、個人的にシン・ゴジラが面白いんだけどそこまでハマらなかったのは、これゴジラじゃない巨大生物だったとして、興収や注目度が下がるかもしれないけど、映画としては成立しちゃうだろうなというところです。シン・ゴジラの場合はゴジラそのものよりもそれと戦う人間ドラマに主眼が置かれていて、だからこそゴジラ知らない人でも面白く人気が出たのだろうけど、逆にゴジラや特撮好きからすると物足りなく思ってしまう。

    シン・ウルトラマンは真逆で、これはウルトラマンじゃないと絶対に成立しない。仮にウルトラマンじゃない謎の巨人が謎の怪獣と戦う話だったとして、見終わった人からは「これウルトラマンでしょ」と感じるだろうな、と思うほど、ウルトラマンであることが前提で作られた設定とシナリオだったなと。

    ちょっと話題逸れて、私がゼルダシリーズ大好きだけどブレスオブザワイルドがあんまりハマらないのも、ゲームとしてはとても面白いけどこれゼルダじゃなくても成立するゲームだなって思ってしまったところです。個人的にゼルダの面白さはアクションゲームとしての秀逸さに加えて、ゲームシステムに溶け込んだ謎解き要素が魅力的だったんだけど、ブレスオブザワイルドはオープンワールドとして面白いゲームではあるものの、謎解きがオマケ要素でしかなかったのがさみしいなと。これは善し悪しではなく個人的な好みの問題であって、ゲームとしてはとても面白かったけどゼルダじゃなかったよなー、と。

    また、本作を見るウルトラマン好きもおそらく段階があって、子供の頃ウルトラマン見ていたなー懐かしいなーという人よりも、ウルトラマンを特撮番組としてがっつり楽しんでいた人のほうが楽しめると思います。端的なキーワードとしては「実相寺昭雄」みたいなキーワードに反応できるかしないか、は本作を見る上で大きな違いになるのかなと。

    そんな前置きはここまでにしていよいよ本編のネタバレ感想。すでに見た人か見る気が無い人だけクリックして先にお進みください。

    クリックするとネタバレを表示・非表示します

    ※【注意】RSSリーダーで読んでいる人へ

    仕様上フィードでは選択制にしたネタバレがそのまま読めてしまうため、RSSリーダーで読んでいてネタバレみたくない、という方はこちらでページを閉じるようお願いいたします。

    本作を通じて自分が一番心動かされたポイントは、子供心にもそれはどうなのよ、と思っていたご都合主義をことごとくリセットした上で新しいウルトラマンとして表現していたこと。なんで怪獣に効かないパンチキックをするのよ最初からスペシウム光線でいいでしょ。ウルトラマンいるときに必ず1人いない人いたら気がつくだろうよ。地球征服するのに子供1人を説得するってどこが知的生命体だよ、みたいな当然湧き上がる疑問は、「そういうものだから」と心に蓋をしていたんだけど、そんな感情はネロンガをスペシウム光線一発で倒した瞬間にすべて吹っ飛びました。そうだよ、それが俺の見たかったウルトラマンなんだよ!

    こういう「大人の都合」みたいな設定はリセットにした一方、では実際の科学に乗っ取って設定を追い込んだというわけでは決してなくて、それはそれでいい。そもそもあんな巨大生物が地球を守ってくれるということ自体が論理的におかしいわけで、そこを科学的に追い込んでいったウルトラマンが見たいわけではないんです。サイヤ人が巨大化するのはブルーツ波という謎の電磁波である、そのくらいの設定で十分なんですよ。リアルを追求した結果作品としてつまらなくなっては本末転倒なわけですから。

    ウルトラ兄弟としては大のゾフィー好きなので、主題歌が「M八七」に決まったと聞いて「ゾフィーの登場ワンチャンあるのかな……」と期待していた自分にとって、ゾーフィの登場もうれしかった。もちろんゾフィーとゾーフィではキャラも全然違うしゾフィーならではの勲章もないんだけど、最初は敵対するかと思われたゾーフィが最後はウルトラマンを理解してくれるというストーリーもとてもよかった。ゾーフィのフィギュア買っちゃいそうだなー。

    以下、ストーリーの感想を覚えている順につらつらと

    • オープニングでシン・ゴジラからシン・ウルトラマンに切り替わるアニメーション。そもそも平面を立体的に見せる演出だけで感動していたのに、原典をオマージュする演出に「ああこれは完全にファンが作ったやつだぞ」という共感が高まる
    • ウルトラマンだと思っていたのにまさかのウルトラQダイジェスト。ただこれはその後のネロンガ・ガボラに続く「着ぐるみ使い回し」演出の布石というのと、「人間も怪獣を倒せる」という設定を見せるためにもよかったのかもしれない
    • なぜか全身シルバーで現れたウルトラマンがスペシウム光線一発でネロンガをKO。それだよそれが見たかったんだよとこの時点でテンション最高潮
    • ネロンガ対策中にいなくなり、ウルトラマンがいなくなると戻ってくる神永が明らかにキャラがおかしい。なるほどこのタイミングでウルトラマンが入ったんだな。
    • ただ原作ではハヤタ同様に振る舞っていたウルトラマンが、本作では明らかにおかしな挙動をする。でも冷静に考えたらハヤタそのままの行動とれていた原作のほうがおかしいよな
    • しかも原作ではゼットンを倒してウルトラマンがいなくなった後、ハヤタの記憶が1話で止まっていることがわかるわけで、ハヤタそのものを演じていた旧作に対して、本作はウルトラマンの意識が残っているのが明らかなのが面白いシナリオ
    • バリバリの実相寺カメラワークで登場した浅見、最初はあんまり意味を感じていなかったけれど、「人間とウルトラマンが心でつながるバディ」としての存在は見終わってみるとなるほど大事だな
    • ウルトラマンの中でも人気回のザラブ、こちらも「なんでベータカプセル都合よく忘れてるんだよ」「にせウルトラマンの顔があそこまで違ったらさすがにばれるだろ」という正直な突っ込みを回避しつつ、ウルトラファンがにやりとするマスクの違いを持ってくる演出はさすがすぎた。ファンじゃないと楽しめない演出ではなく、ファンでなくても楽しいけどファンだとさらにニヤリとさせられる、というのは実に絶妙
    • 知的といわれている割に少年を説得できなくてキレ散らかすわ、暴力嫌いとかいっといてウルトラマンを一本背負いするわで全然知的じゃないメフィラスが、本作では見事な知的生命体に。そしてメフィラスを演じる山本耕史がすごすぎる
    • というか山本耕史と斎藤工の演技が飛び抜けすぎていて、この2人以外はその他にしか見えなくなっていた
    • メフィラスが出る時点で巨大フジ隊員演出は想定できるわけだけど、まさか浅見をそう使ってくるかー!
    • 人間が実はウルトラマンにも並ぶ兵器になり得るという話、実はウルトラマンたちも昔は人と同じ姿だったという設定も活かしているのが美しい
    • まさかのゾフィーがゾーフィとしてゼットンを操る設定。これも後から調べたら昔の誤植を逆手に取ったみたいだけど、「命2つもってこれるならなんでもありだろ」と子供心に思った疑問を払拭しつつ、「ザラブもメフィラスも言ってることは正論だよな……」と思っているところにさらにド正論で人間滅ぼそうとするゾーフィには悔しいけど納得しかない
    • ゼットンにウルトラマンは勝てない、最後は人間が勝つ、という原作に対して、ウルトラマンと人間が力を合わせて勝てるというのはよかった。原作で最強の怪獣ゼットンをペンシル爆弾一発で倒しちゃうあっけなさは子供心に「えええええ!?」ってなったものなー
    • そもそものストーリーとして、自分の命をかけて子供を救った神永に興味を持ったウルトラマンが、最後に自分の命をかけて人類を救うというのは、同じウルトラマンが死ぬエンディングでも納得度が高い
    • 映画のキャッチコピーが「空想と浪漫。そして、友情」で、確かに今までのウルトラマンも人類との友情が描かれていたけど、それを「ハヤタの死」「ウルトラマンの死」をうまくなぞらえながら強化したところに本作の面白さがあった

    現在のところ興行収入は40億円で、今まで10億円届くことはなかったウルトラマン映画としては史上最高記録(まあいわゆるウルトラマン映画と比べるのも違うなとは思いますが)、シン・ゴジラの約80億円に対して半分のところまで来たので、これが最終どこまで伸びるのか。シン・ウルトラマンの「デザインワークス」に書かれた庵野さんのコメントには、次回作も予定はあるけど今作より圧倒的にお金がかかるので今作の興収次第、というコメントがあるので、次回作も見たい自分としてはもう1回くらい見に行って興収にわずかながらでも貢献したいなと思います。そして予定にはある第3弾の「シン・ウルトラセブン」もぜひ実現して欲しい!

    というような話をポッドキャストでもしているのでよろしければ。

    【第127回】ネタバレ全開で語るシン・ウルトラマン
    https://kaidan.substack.com/p/127

    (さらに…)

  • 【ネタバレ選択制】映画「マトリックス レザレクションズ」見てきた

    【ネタバレ選択制】映画「マトリックス レザレクションズ」見てきた

    マトリックスシリーズの最新作「マトリックス レザレクションズ」、見てきました。

    個人的な感想としては相当に面白かった。さすがに1を超えることはないものの、2、3よりは格段によかったな。

    ネタバレはこの後選択制にしますが、とりあえずこれから見る人は過去3部作を見てから行った方がいい、ということだけ強くお勧めしておきます。

    また、劇場で販売されているパンフレットは通常版と特別版があるのですが、内容が全然違っていて、本作を解説するのが通常版、過去作含めたマトリックスシリーズについて言及しているのが特別版とのことなので、本作の解説読みたい人は通常版がよさそうです。まちがって特別版買っちゃったよ……。

    『マトリックス レザレクションズ』パンフ、通常版と特別版どう違うの問題|稲垣 貴俊|note
    https://note.com/inagakitakatoshi/n/n6d37a0d05856

    あ、あと最後のスタッフロール後にも映像がちょこっとあるので、最後までトイレ我慢しましょう。

    以下は本編のネタバレ。すでに見た人か見る気が無い人だけクリックして先にお進みください。

    クリックするとネタバレを表示・非表示します

    ※【注意】RSSリーダーで読んでいる人へ

    仕様上フィードでは選択制にしたネタバレがそのまま読めてしまうため、RSSリーダーで読んでいてネタバレみたくない、という方はこちらでページを閉じるようお願いいたします。

    映画の好みはひとそれぞれですが、マトリックスを当時見て一番感動したのは映像美よりもシナリオのメタ展開。当時のテレビCMはネオとスミスが戦うアクションシーンばかりを宣伝しておいて、いざ映画を見るとそれは虚構の世界であり、現実のネオは坊主頭でプラグにつながれている、という設定に驚くとともに心を鷲掴みにされたものでした。

    今作の評価が二分するのは映像を見るかシナリオを見るかによるかなと思っていて、映像については1999年当時こそ最先端の映像だったけど、それから20年近く経ってさまざまな映像手法が確立されたタイミングで、当時のような衝撃を受ける映像を作り出すというのは相当に難しいんじゃないだろうか。

    シナリオも同じで、映画だけでなく漫画やゲームでさまざまな神脚本が生まれている中、今までに無い脚本を作り出すというのは相当に難易度が高い。醤油ラーメンしかない頃に豚骨ラーメン作るのと、これだけラーメンスープが確立された時代に新たなラーメンスープ作るのとは訳が違うだろみたいな感があります。

    2021年に作るマトリックスは、新しいものを作るのではなく、数ある表現や過去の自分たちが作り出したものの中から何を選択するのか、と言う点で、過去3作をメタに扱い新しいエピソードを生み出したという点で個人的にはとても満足いくものでした。

    1に対して2、3はすでに虚構と現実がネタバレしてしまっているので、1で作り出したマトリックスという世界観を深掘りするという楽しみはあったんだけど、ストーリーという意味ではそこまで深みは無かった。映像的に無限スミスは面白かったけど、それも2で見てしまうと3はもういいかなという感じになってしまうし。

    余談ですが3でネオとトリニティーが雲の上に飛び出したシーン、なんだよ雲の上いけるなら機械も雲の上いけば太陽発電できるじゃんとおもったんだけど、それは機械にはできない設定とかあったのかな。

    話を戻して本作のストーリーの細かいところでいうと、過去3作はゲームの中の話なんだ、という設定にすることで、過去作での虚構と現実という対立を、ゲームと現実という演出で再現。最初にモーフィアスやバッグスが登場しているから「マトリックスはゲームじゃない!」と理解できるのですが、あれがいきなり現実世界から始まっていたら相当に戸惑うのでは。というかそういう演出でもよかったのに敢えてバッグスたちを出してきた狙いとかは聞いてみたいところです。

    前半のゲーム設定で心を鷲掴みにされ、飽きるところも無く最後まで夢中になって駆け抜けました。モーフィアスやスミスの役者が違うのも理由付けはされていて一応納得はできたし、メロビンジアンがボロボロになって出てきたり、過去作では小さな子どもだったサティーがキーパーソンとして出てきたりと過去作もうまく取り込んでいる。

    そういう点で本作はシン・エヴァっぽさも感じた。完結から20年近く経って過去作を見直し、心を落ち着かせてストーリーを整理しながら続きの話を作り、過去のエピソードを伏線として再利用するあたりのうまさもシン・エヴァっぽい。

    過去作で一世を風靡したバレットタイムを自虐っぽくネタにしてみたり、過去作ではどちらか1つの選択をつきつけていたのをに対して、本作では機械との共存だったり、絶対敵だったスミスが助けてくれたりと、決して二択じゃないよ、みたいな過去作へのアンサー的な視点も面白かった。マトリックスの人をいちいちエージェントに返信させるのではなく人間爆弾にさせるあたりとかは怖さもありつつ設定としては痛快でした。

    そして本作で実は肝だなと思ったのはネオもトリニティーもほどよい年の取り方をしていること。やはり映画作品である以上外見というのも大事なもので、ほとんど年を取らないと言われるキアヌ・リーブスはもちろん、トリニティ役のキャリー=アン・モスも20年経ったとは思えないたたずまいで、この2人も外見が違っていたらまた映画の方向性も変わっていたんじゃ無いかと思う。

    一方アクションは年相応というか、困ったらエルボーで吹っ飛ばすあたりがさすがに年を感じさせるけど、20年前と同じアクションしろというほうが無理だし、個人的にマトリックスの面白さはアクションではなくシナリオだ派なので、そこはさほど気にならず。むしろ年を取ってもあれだけ動けるキアヌとキャリーに加えて、過去作ほど激しい動きをしなくてもきちんとアクションとして成立する殺陣のうまさがすばらしいなと思った。

    やたらと日本がフィーチャーされていて、富士山はともかくとして最後のほうに出てくる鳥ロボットが「クジャク」なのもびっくりした。Peacockという英語があるのに敢えてクジャクという単語を使うあたり、監督は相当に日本好きなのかな。

     

  • 【ネタバレ選択制】「シン・エヴァンゲリオン劇場版」見てきた

    【ネタバレ選択制】「シン・エヴァンゲリオン劇場版」見てきた

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    何度もの延期を経て公開されたシン・エヴァンゲリオン劇場版、略して「シン・エヴァ」、最速上映回で見届けてきました。

    シン・エヴァンゲリオン劇場版
    https://www.evangelion.co.jp/final.html

    エヴァはただ見るだけでなくやっぱり語りたくなる作品ではありつつ、いろんな事情で見たくても見られない人もいるだろう、ということで今回もネタバレ選択制で初回を見た感想を初日の勢いで書いてみます。

    シン・エヴァの前に何を見るべき?

    本題に入る前のネタバレ無し話題として、シン・エヴァ公開のタイミングで興味持った人からちょいちょい「シン・エヴァ見る前に何見とけばいい?」と聞かれるんだけどこれはなかなか難しい。というのもシン・エヴァはそもそも今までのエヴァをやり直すという意味で期待されている作品だから、今作だけ見てもそのやり直しの意味がわからなくて、シン・エヴァの本筋を楽しめないだろうから。

    ファンの裾野を広げるためには、「全部見ろ」という言い方はせず最低限の作品で済むように提案したい派ではあるものの、エヴァに関してだけはまずテレビを見て最終回に衝撃を受け、そのテレビをやり直す意味で作られたはずの「Air/まごころを、君に」でさらなる衝撃を受け、その上で見るからこそのシン・エヴァなので、一度も見てない人は大変だと思うけどやはりテレビ版から見て欲しい。いまならAmazonプライム・ビデオでテレビ版も旧劇場版も新劇場版も見られるので。

    コミックも読もう

    あと意外に見過ごされがちなコミックですが、新劇場版見るためには必ず読んでおいた方がいい。コミック版はテレビとも旧劇場版ともストーリーが微妙に違っていることに加えて、コミックならではの台詞の多さで、映像だけではわかりにくかった話が理解しやすい、というのもありつつ、一番大事なのは最終巻に収録されたサイドストーリー。この話を知っているかどうかは新劇場版の理解に大きな影響を与えるので、まだ読んでない人は最終巻だけでも買って読んでおくことお薦めします。

    B00P27J7A0
    新世紀エヴァンゲリオン(14) (角川コミックス・エース)

    と、本編に関係ない前置きに続いていよいよ本題。まだ初回なので見落としも多いと思いますが、初見の気持ちを新鮮なうちにメモっているくらいの温度感でご覧下さい。

    クリックするとネタバレを表示・非表示します

    ※【注意】RSSリーダーで読んでいる人へ

    仕様上フィードでは選択制にしたネタバレがそのまま読めてしまうため、RSSリーダーで読んでいてネタバレみたくない、という方はこちらでページを閉じるようお願いいたします。

    まずは全体的な感想として、すごく綺麗なまとまり方と着地だった。以前の作品ではトウジの死によって止まってしまった同級生達が大人になって帰ってくるだけでなく、委員長は無事にトウジと結婚できて、ケンスケも村を支える立派な指導者として成長している。伝わりにくいかもしれない例えですが、ウルトラマン80で投げっぱなしてしまった先生設定をウルトラマンメビウスでうまく迎え入れたような綺麗さがあった。

    とても重い思い出だった「まごころを、君に」のエンディングも新しく書き換える形できちんとフォローが入っていて、その他序破Qの設定も大筋はほぼほぼフォローされていて、まさに最後のエヴァンゲリオンにふさわしいまとめ方。とっちらかったスターウォーズ新三部作を最後でなんとかまとめきったエピソード9みたいな巧さを感じた。

    だけどその巧さゆえにさみしさを感じてしまうと言うか、ああこれで本当に終わってしまうんだという感情と、綺麗にまとまりすぎているがゆえに何故か物足りなさを感じてしまうところもある。周囲の人間を振り回すだけ振り回してきたドラマのヒロインが最終回になっていきなりおとなしくなってしまったような感じというか。

    すごいうまくまとまっていたが故のわがままな感想であるのは自覚しつつ、この不安定な感情に折り合いつけるにはひたすら考察を読みまくりつつあと何回か見るしかないのかもしれない。シン・エヴァに備えて序破Qも見直していたんだけど、シン・エヴァを見た上でもう1回見返したくなってるなー。

    以下感想をエピソードやキャラごとに。

    Qからのシン・エヴァ

    戦闘シーンは最高にかっこよかったけどストーリー的にはとことん落とされたQ。これは最後で盛り上げるためにわざと落としているんだ、と信じていた思いは見事に昇華されて、ああQで凹んだ甲斐はあったよなーと素直に思えた。いまならQをもう少し前向きな気持ちで見られそう。

    シンジ

    ついに本当に自分の気持ちでエヴァに乗り、そして自分のやってきたことに対する責任も自分で取ることにしたシンジくん。もうこの成長こそがエヴァの最後だよなあ。しかしシンクロ率が無限大になるとマリのコックピットからワープしたりやりたい放題だったな。

    あとSDATをゲンドウに渡すくだり、すごくいい設定だったけど、これ最初からなのか、シン・エヴァ作る時に考えた設定なのかは気になる。

    そして大人の声でまさかの神木くん! でも緒方さんの声も聞きたかったなー。

    ゲンドウ

    もう1人の主人公とも言えたゲンドウ。ゲンドウの人類補完計画は今作でどう描かれるのか期待してたけどやっぱりユイに会いたいだけだったw。結局それかよという思いはあるものの、一方でこのゲンドウの小ささがシンジといい対比になっているわけで、ゲンドウが自らを認めたという点でもこれは最後のエヴァだよなー。結局は死んだ妻に会いたいオッサンに振り回された世界だった。

    冬月

    ユイに会いたいゲンドウの行動はそれでも理解できるけど冬月はなぜ最後までゲンドウを味方したのか。そして最後にはマリに協力するのか。最後まで冬月の心情が一番よくわからなかった。実はゲンドウを愛していた、とかなら一番しっくりくるんだけど、ユイに会いたいだけではあそこまでしないだろうし、こんな世界の終わりを望んではいないようにも見えるし。

    レイ

    Qで落とすだけ落とした上での村編! とてもいいレイでした。個人的には髪が伸びたレイもとてもよかった。最後に登場したときはシンジより若く見えたけど、一度死んでしまったレイは生まれるところからやりなおしてたのかな。

    アスカ

    まさかの使徒化! アスカは人間ではない設定だったけどこれはいつからだったのか。レイと違ってアスカには母親がいるので、ユイのコピーとして作られたレイとは訳が違う。ではどこで人間でなくなったかというとやっぱり惣流じゃなく式波という名前になった新劇場版からなのかな。最初は自分が人間ではないことに気が付いてはいなかったけど、破からQへの時間の流れの中で自覚してしまった、ということなのだろうか。

    Qから続いてとげとげしかったアスカが、お弁当のお礼を言い、そしてシンジの告白に照れるところはアスカ派として最高でした。アスカも無事人間に慣れているといいんだけど。あとケンスケとはどうなるんだろうな。心は開いているみたいだけど付き合うまではいってはいないような……。

    カヲル

    今まで神の視点だったカヲルくん、無限大シンジのおかげでついに人の立場に。そしてカヲルだけ存在が謎だったけど、なるほど加持さんの上司という設定もうますぎる。アスカも使徒化したことで「元人間が使徒になる」という設定もちゃんと無理なく結びつくわけだし。ただいつ頃の上司だったんだろう。ゼーレ上層部とも仲良かったからゼーレの頃なのかな。

    マリ

    全体的にうまくまとまった中で一番存在として謎だったマリ。いや後半まではよかったんだけど、最後そこでシンジとくっつくのか! というところがとってつけた感があってもやもやが残る。とはいえただ手を引いただけだし別にシンジとマリがくっついたと確定したわけではないんだけども。

    あとやたら古い歌を歌うマリ、コミックの設定上は1996年に16歳なので、仮に現代に生きていたとして41歳、その世代で水前寺清子はさすがにちょっと古いよということは同じ世代として強調しておきたい。

    トウジ&委員長&ケンスケ

    繰り返しだけどこの3人がきちんと登場したところの回収がきれいすぎて、「え、これエヴァ見てるの?」と不思議な気持ちにさせられた。エヴァにトウジが乗らない世界線だったところからもう決まってたのかなこの流れ。

    新劇場版の世界線

    テレビ版の海は青かったけど新劇場版は赤い、だから並行世界線ではなくループなのだという論が個人的にはしっくりきている。そのループを認識できていたのがカヲルくんということなのかな。

    村編

    ナディアの島編を見ているかのような感覚に陥った。平和な世界で幸せそうなレイを見るのがうれしくもあり、でもこれ長くは続かないんだろわかってるんだという気持ちと、幸せの終わりをどこか待ってしまっている自分がいて、気持ちいいけど気持ち悪い複雑な感情で見てました。これは2周目のほうが素直に楽しめるシーンかもしれない。レイをかわいがる周りの女性陣が最高だったな。

    ミサト

    Qでは別人だったミサトさんが、やっぱりシンジを大事にしているミサトさんで、眼鏡を外した姿も見られてホッとしたけど、結局最後にミサトさんだけ死んでしまった。ご都合主義で全員活かすこともないとはいえさみしさは残りつつ、天国で加持さんに会えているのかな。最後に思いを吐露したミサトさんをみると、Qのミサトさんがまた違った視点で見られそうです。

    戦闘シーン

    Qもすごかったけどシン・エヴァはそれ以上のかっこよさだった。最後ということで映画見ながらいろいろ考えてしまったけど、戦闘シーンは素直に「かっこいい!」という感情だけで見られたかも。

    最後に

    自分がエヴァに触れたのは最初の放送を録画した友達の「いいから6話まで見ろ」というビデオテープによる勧誘だったのでリアタイからはちょっと遅れるのですが、それでも25年近くも続いた作品を最後まで見届けられたのは感慨深い。テレビの最終回が印象的すぎて、そして「Air/まごころを、君に」がトラウマになるレベルでとんでもなかったからこそ、「本当に終わるエヴァを見たい」という気持ちでここまで来たよなあ、そういう意味ではあの頃にリアルタイムで「Air/まごころを、君に」を見られたこと、そしてQからシン・エヴァまでここまでまたされたこともいい思い出です。

    考察というレベルではない単なる感想とメモですがひとまずこんなところで。

  • 【ネタバレ選択制】映画「ミッドナイトスワン」見た

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    周囲で評判が良く、母親からも「面白かったわよ」と言われて見てきました。

    映画『ミッドナイトスワン』公式サイト|上映中
    https://midnightswan-movie.com/

    面白いと言えば面白いんだけど見終わった後なんだかしっくりこなくて1日考えてしまい、いろいろ感想とか調べてみてだいぶ腑に落ちたところでネタバレ選択制感想です。

    クリックするとネタバレを表示・非表示します

    以下感想をサクッと箇条書き、順不同で

    • 草なぎ剛の演技が評価高かったけれど正直微妙だった。特に前半、一果の前で泣き出すシーンのわざとらしさ、ふらふらになって通行人とぶつかるシーンでぶつかる前によろけているのがわかりやすすぎるあたり
    • ただ後半は割と自然で違和感なかった。それはオーバーリアクションな演技が少ない分雰囲気でいけていたということのような
    • 一果を演じた新人の評価も高かったみたいだけど、感情高ぶるシーンとかはちょっと物足りなかった。ただ全体的にキャラが合ってて違和感がない
    • 何よりバレエの実力がある。素人目でも綺麗だなーと思わせるうまさだったのでそこの説得力含めトータルでよかった
    • 水川あさみの演技が良すぎて嫌いになるというはてな匿名ダイアリーがバズってたので水川あさみファンとして期待してたんだけど、いい意味でいつも通りだった。彼女ならこのくらい余裕でしょうというか、もっととんでもないクズ演技なのかと思ってた
    • 冒頭、なぜ一果を迎え入れるの? という違和感はお金欲しさなんだな、というところで納得
    • 一果を受け入れるシーン、そこまでそうとうに迷惑がっていたのにあっさり受け入れたな、という印象。自傷行為に自分を重ねたみたいな演出もうちょい欲しいかなとは思ったがまあここはそんなものかな
    • 心通じ合っているシーンは作品中一番よかった。ご飯のシーンもいいけど夜一緒に踊るところ
    • ただあそこでの老人の発言がタイトルを意識させようとちょっとご都合感を感じた
    • りんは自分よりうまくなった一果を憎むのかと思ったら実は好きなのね。そこもちょっとご都合感
    • 大会出るあたりから映画の空気が変わり始める
    • りんはいかにも飛び降りそうで飛び降りた。ちょっとテンプレ的あざとさを感じる
    • りんがどうなったかは描写無いけど、座席に姿が見えたということは死んだということなのかな
    • 舞台でうごけなくなり「お母さん」とつぶやく一果。ここが最大の謎
    • うごけなくなってお母さんなのか、お母さんの姿を見て動けなくなったのか、映画見ているだけだと前者に見える
    • 前者だとすると結局自分のお母さんに会いたかったわけで、唯一実の母親を求めるシーンということになる重要なポイント
    • お母さんの姿を見てうごけなくなったのだとしたら、お母さんを見つけたという描写が欲しい
    • 結局ここはどっちなのか、インタビューとか調べた方がいいのかな
    • 何にせよこれをきっかけに凪沙はタイで性別適合手術を受けるというストーリー最大の分岐点
    • でもこれは一果が望んでなかったことだよね。髪を切って男の姿になった凪沙を見て一果が怒ったのは、女性のはずの凪沙が男装して男として働こうとしたことと、自分のために犠牲になろうとしたこと
    • 特に後者は母親が酔っ払いながら「あんたのためでしょうが!」と怒鳴っていたところとも重なる
    • 身体を女性にしたいというのは凪沙にとっての望みでもあっただろうからそれはいい。だけど一果のために自らを犠牲にするのは一果の望む結末ではなかったはず
    • 自宅へ乗り込んだ凪沙を受け入れない家族。これは母親にずっと隠していたことからもそうなるだろうなとは思う
    • もみ合った結果服が破れてはだける胸。そんなんで服破けないだろうというここもあざとさ
    • そもそも胸出していいの? と思ったらこのブログで指摘されていた。女性の胸が出るならPG12区分のはずがこの映画はG区分らしい
    • ということはあの映画で凪沙の胸は女性と思われていないってことだよね
    • 結局実家に残る一果。それは生活を考えたら仕方ないけど、そこから卒業式に飛ぶところへ天気の子と同じ違和感。まあ逃げ出した天気の子と、親族に振り回された一果とでは状況が違うけれど
    • 久々に会った凪沙は、股間から血を出して目も見えなくなりボランティアの介護を受けるほど変わり果てていた。おそらく幸せではないだろうと思っていたけれど想像以上のショック
    • ただこれもいまどきそんな危険な手術はない、ということで批判が起きているらしい。ハフポスの記事参照
    • もういない金魚に餌を与える凪沙。ああそのために金魚を置いておいたのね……。
    • でもボランティアが通ってるなら、もう金魚がいないことは教えてるんじゃないかな……。
    • 海へ行きたいという凪沙。ここで冒頭の伏線を回収
    • 死にに行くのかな、と思ったけど動けずそれどころではなかった
    • 最後は眠ったのか死んだのか、描写されていないけど小説版では死んだっぽい
    • そこで海に入る一果。自分も死のうとしたのか、海の上の白鳥を見せたかったのか。どっちとも取れるけど後者であって欲しいというか前者だとテンプレすぎる
    • 海外留学で一果の背中が凪沙のように見えるという演出はとてもよかった
    • 「見ててね」というってことは、療養中ではなく死んだってことなのかな

    時系列順に感想書いたけど、全体を通して凪沙をすごく道具として扱っている後味の悪さが違和感だったんだなと理解した。テンプレが悪いとは言わないけど、トランスジェンダーの世界を描きつつもトランスジェンダーを配慮しているわけではなくただ消費している感じ。それがいい悪いとかではなくてただ単に好みではなかった。

    全裸監督と同じ監督、と言われると納得する部分はある。ただ、全裸監督は当時のAV業界の視点に立った感じがしたけど、本作でのトランスジェンダーはそうではない印象。

    あと、映画の公式サイトでは、一果が虐待されていたという説明になってるけど、あれって虐待なんだろうかなとも思った。もちろん酔っ払って子供を殴ってしまうことは虐待と言えるんだろうけど、それでもあの母親としては一生懸命子供を育てるために働いていて、本人もその環境から抜け出せずに悩んでいる。これだけセンシティブな題材を扱う作品において、あれを虐待とひとくくりにするのもちょっと雑な気がした。

    役者も良かったしストーリーもよかったし、すべての映画で救いがなければいけないとも思わないけど、本作だとあまりにトランスジェンダーが映画の道具として消費されているように見えてしまった。とはいえ当事者ではないから実際のところはわからないし、当事者のために作った映画でもないので重ね重ねいい悪いとかではないんだけど、両手を挙げて評価はしにくいな、という感想です。

    あとこれは難しい問題だけど、凪沙が一果を慈しむ気持ちは母性というのだろうか。というのも凪沙が一果がかわいく思えるシーンは、男の自分が見ていてもかわいくて抱きしめたく思えてしまうので、それは単に親心であって、女性が持てば母性、男性が持てば父性というだけなのか、それとも母性と父性に決定的に違う何かがあるのか。凪沙が女性の体になりたかった気持ちと、一果をかわいいと思う気持ちは女性だからなのか、それとも別の感情なのか、とか答えのない思いは心に宿りました。

    と、気になる点は多いものの、色々考えさせられるという点でとても面白い作品でした。映画館の上映はそろそろ終わりそうですが、配信で出てきたときに興味ある人は見てみてください。

  • 「運命じゃない人」がU-NEXTで配信してた

    「運命じゃない人」がU-NEXTで配信してた

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    「アフタースクール」「鍵泥棒のメソッド」で有名な内田けんじ監督の初期作品。その前は自主映画作品とのことなので、本作が実質デビューに近い作品なのかな。

    アフタースクールのクオリティに感動し、「この人の作品もっと見たい!」と思ってずっと気になっていたものの配信では全然出回っておらずどうしたものかと思っていたら、つい先日U-NEXTで配信始まったことを知りようやく視聴できました。

    運命じゃない人の動画視聴・あらすじ | U-NEXT
    https://www.video.unext.jp/title/SID0046118

    デビュー作かつインディー映画ということで予算も少なめ、荒削り感はあるものの、内田監督ならではの伏線やミスリードが絶妙。あと中村靖日が出演してて、インディー映画でこんな有名俳優使うんだと思ったら、むしろこの映画で有名になったのね。

    ようやく視聴できた感慨深さとともに、そろそろ内田監督の新作が見たいのですが、鍵泥棒のメソッド以降、長編映画やってないみたいなんですよね……。

    個人的にこれだけ絶妙なシナリオ作れる人は、映画もいいけどストーリーを自分で選択できるアドベンチャーゲームもすごく相性がよさそう。428みたいなゲームを内田監督の脚本で作ったりしないかなー。

    運命じゃない人が見れた喜びで、大好きなアフタースクールもBDで購入して久々に視聴。何度見ても絶妙な脚本で、2周目、3周目でまた違った味わいがあるほんとに大好きな映画です。いやほんと新作が見たいぞ……。

    B008B79KLE
    アフタースクール [Blu-ray]

    あとU-NEXT、地味にいい作品配信してて、「セガvs.任天堂/Console Wars」もU-NEXT独占なんですよね。いま無料期間なんだけど、これは無料期間の後もそのまま契約してしまうかもしれない。

    セガvs.任天堂/Console Warsの動画視聴・あらすじ | U-NEXT
    https://www.video.unext.jp/title/SID0053396

  • 【ネタバレ選択制】映画「パラサイト」見てきた

    【ネタバレ選択制】映画「パラサイト」見てきた

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    史上初、英語以外の外国語でアカデミー賞作品賞を受賞した話題作「パラサイト」、アカデミー受賞よりちょっとだけ前のタイミングで見てきました。

    周囲でも大絶賛の声が多く、ネタバレ禁止系の映画ということで「韓国の映画」「主人公はどうやら貧乏らしい」くらいの知識で見てきたのですが、感想としては「面白いんだけど好みか好みじゃないかで言うと好みではない」「アカデミー作品賞、という感じではないなあ……」というのが正直なところ。

    以下、映画見た人を大前提としたネタバレエントリーなので見たことある人だけクリックして続きを読んでください。と言うかこれがやりたくてこのブログ書いているというのも正直なところですが。

    クリックするとネタバレを表示・非表示します

    ステルスものが苦手

    これは本当に好みの問題なのですが、バレないように侵入する系の設定っていつバレるかドキドキしちゃうので辛いんですよね。メタルギアソリッドはそれが苦手なものの、ステルス要素を上回りシナリオとゲームの面白さでついプレイしてしまうのですが、パラサイトは苦手要素を超えるほど自分の中にはツボらなかった。

    重ね重ねほんと好みの問題で、これはラブコメ苦手だからラブコメ映画だめ、レベルの話です。

    登場人物に共感できない

    冒頭こそ貧乏な主人公がうまいこと口先でバイトを雇わせようとしたり、うまいこと妹を採用させたりという流れは面白かったのですが、父親や母親を雇わせるために以前の運転手や家政婦を追い出し、しかも金持ち夫婦のいない間に酒盛りしたりと調子に乗る姿がどうにも共感できず。

    これが本当に小悪党つっぱしるなら理解できるのですが、辞めさせた運転手どうしてるかな、とか心配してみたり、大雨で住めなくなった家から避難所生活強いられてかわいそうな主人公たち、という描写に映るあたりで違和感が拭えず。

    共感というのは自分と同じ価値観でなくてもよくて、大悪党なら大悪党でいいのですがそこに一貫した何かが欲しい。そういう点でこの主人公たちは、小ずるいのか悪い人なのか社会のせいで苦労している人たちなのかという立ち位置がしっかりしてなくて感情移入できませんでした。まあそれがいかにもな小市民でいいという描写なのかもしれませんが。

    どんでん返しがさほどでもない

    これは前評判を聞きすぎていたのもあるかなあと思うのですが、細かな伏線回収はあるものの、大きめなネタとしては「もう1家族パラサイトがいた」くらい。やたら家政婦が大食いだとか夜中にお化けをみたとかいう細かな伏線はしっかり回収できているのですが、ネタバレ禁止という割には1ネタで終わったなあと。

    ネタバレ禁止作品でいうとカメラを止めるなのほうが仕組みとしてもよくできていて、あれを見てしまうと単なる一発ネタだったなあという気がします。

    設定がザル

    1年契約で前の家庭教師戻ってくるのに妹ごと家族雇ったらバレバレだろうよとか、大雨でキャンプから帰ってくるくらい想像しろよとか、あんなに酒飲んでたらさすがにバレるだろとか、そうとう頭いい設定なのに細かいところが粗くてそこにも違和感を覚えてしまう。コメディに徹するなら設定がザルでもいいのですが、最後にヒューマンドラマ持ってくるあたりでそのザルさがより気になってしまいました。

    ドラゴンボールで悟空がかめはめ波打つとかクリリンに鼻がないとかは違和感ないのですが、島耕作が謎のビーム発したらそれは違和感だろ、みたいなことですかね。まあ島耕作もいろいろ魔法みたいなこと起きたりはするのですが。

    以上、いずれもすべてにおいて作品の善し悪しではなく好みの問題なので、人によっては上記のようなことは一切気にせず楽しめるのでは。作品としてはよくできているし面白かったのですが、好みの問題で「面白かったよ!」と自分の好きな作品としては推せないかな、くらいです。ただ友達に聞かれたら「面白いよ」とは返すかなと思います。

    あと映画を見た人向けの補足情報としてこれが面白かった。ネタバレなしということで映画見る前に読んだんだけど、これ映画見た後に読んだ方が面白い気がする。

    韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(『寄生虫』)をより楽しむための韓国文化キーワード7つ(ネタバレなし) | エンタメ総合 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」
    https://www.konest.com/contents/korean_life_detail.html?id=26119

    パラサイトがアカデミー作品賞を受賞した背景なんかはこのあたりの記事が面白い。真実はわかりませんが、いくつもの要素がからみあっての受賞なのかなーと腑には落ちました。

    町山智浩・宮藤官九郎・北丸雄二 2020年アカデミー賞を振り返る
    https://miyearnzzlabo.com/archives/62625

    Why Parasite made histric won at the Oscars : 第92回 アカデミー賞の最優秀作品賞を含めた最多の計4部門で受賞を果たしたポン・ジュノ監督の「パラサイト」は外国語の韓国映画なのに、なぜ ? !、アメリカの映画賞を制覇するという前代未聞の快挙の歴史的な転換をなし得たのか ? ! – CIA Movie News
    https://www.ciamovienews.com/2020/02/Why-Parasite-made-histric-won-at-the-Oscars.html

    あと伏線ジャンルでいうと邦画ですがアフタースクールはすごすぎる。アフタースクールについては思うところいろいろあるので時間あったらまた改めて書きます。

    アフタースクール – 作品 – Yahoo!映画
    https://movies.yahoo.co.jp/movie/329681/

  • ネタバレ全開で「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」を肯定していく

    ネタバレ全開で「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」を肯定していく

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    42年に渡るスター・ウォーズシリーズの最終作、映画館で見届けて参りました。

    20200101_202616

    ネタバレしないよう事前知識はほとんど入れずに行ったのですが、すごくよかった。ちなみに今回の3部作では新作の予告編として素晴らしいエピソード7、突っ込みどころありすぎながらカイロ・レンだけが光っていたエピソード8、というのがここまでの感想です。

    映画終わった後に人の感想読むのが楽しみなのですが、割とファンからは酷評されているっぽい。まあこれだけの大作は何やっても文句言われる宿命だとは思いますが、個人的には十分以上に楽しかったので、こういう肯定意見もあるよというのを思うまま書いてみます。

    前提

    スター・ウォーズファンなら当然知っている話ですが、エピソード7から9までの3作は監督が異なり(正確には7と9が一緒ですが)、すべてのエピソードは一貫したストーリーに基づくのではなく、前のエピソードが終わってから次の監督が新しくストーリーを作るというリレー方式で作られています。

    前作までの世界観を受け継ぎつつ「詳しくは次のエピソードで!」と丸投げした予告編チックなエピソード7、そしてそんな7とは真反対のごとく予定調和を否定して裏切りまくったエピソード8までは次があるからできる自由度だったわけですが、エピソード9はここで終わらせなければいけないという制限がつく以上、7や8ほど自由にはやれない。面白さはもちろんのこと「話として全部拾った上で着地する」という課題についてエピソード9はすごくうまく着地したし、これだけバトン方式でやってきたシリーズ締めくくる最後としてはお見事すぎると思います。

    古くで言えば和歌の世界、最近で言うならラップバトルのような、相手に対して歌を返しながらストーリーを紡いでいき、結果として1つのシナリオにうまく着地したその流れそのものはすばらしいし、最初からシナリオが決まっていない中で、しかも途中で別の監督が描いた真逆の世界感を捨てることなくなんとかキャッチしながら大団円したという手腕はすばらしかった。

    うまいこと着地したという意味ではレイア姫のエピソードもすごい。元々まったく別のシナリオを想定して収録した、たった8分の映像を別のシナリオへ見事に溶け込ませていた。この記事読むまで8分制限があったなんてまったく気がつかないくらいレイアは自然に登場していて、JJさすがすぎる。

    『スター・ウォーズ』レイアが「最後のジェダイ」の予定だった ─ 『スカイウォーカーの夜明け』出演時間は8分以下か | THE RIVER
    https://theriver.jp/leia-last-jedi/

    もちろん、最初から最後まで計算しつくされたエピソード7〜9を見てみたかった気持ちはあるけれど、ないものねだりしても仕方ない。そしてそんな前提踏まえても普通にうまい展開だし映画として面白かったし、ちゃんとスター・ウォーズ締めくくってくれたよなという点で評価は高いです。

    あとそもそもとしてスター・ウォーズはそもそも新しさを求めるべきなのか、世界観を守りつつ王道を貫くのかで言うとこの作品は後者でいいのではというスタンスでもあります。新しいことそのものに意味があるのではなく、新しかろうが古かろうがいいものはいいわけで、新しくないからだめ、っていうのもそれはそれで偏りではないかなと。もちろんこれがデヴィット・フィンチャーの映画だったら話は別なわけですが。

    前置きが長くなりましたが、今回のエピソード9で気になる部分を順不同でコメント。他にも思い出したら追加するかもです。

    やっぱり今度もパルパティーン

    パルパティーンの登場は「話が唐突すぎる」というのと「結局パルパティーンかよ」という2つの突っ込みどころがあるわけですが、前者に関しては今までのエピソードもそんなもんなのでそこは攻めても仕方なし。エピソード5見た後のエピソード6はストーリー飛びすぎてわけわからなくありませんでした?

    そして後者については、前作のエピソード8でスノークが真っ二つにされるわけですが、あんな雑魚なやられ方、どう見ても本体じゃなくてラスボスいるでしょ。そしてスノークを超えるボスとしてのパルパティーンは、新しさがないという点を除けばこれ以上ふさわしいキャラはいないわけで。エピソード7、8とボスだったスノークに対してそれを超える新キャラがいきなり出てきても微妙だし、あるとしたら「スノークの本体は別にいた」くらいのオチだろうけど、だったら「パルパティーンがあやつってた」のほうがシナリオとしてはしっくり来るかな。

    スパイはフォックス

    露骨にプライド将軍をカメラで抜いてくるあたり「ああこの人スパイじゃないな」と逆にわかりやすい構図。7からでてきたフォックスがスパイ、というのはオチとして面白いのですが、これについてはなー、レジスタンス応援したら自分も死ぬんだぞ? というところで若干納得がいかないものの、それでも恨みを晴らしたいくらいカイロ・レンを憎んでいたことと、レンさえ落とせればなんとかなるという短絡的な発想しかできない小物でしたという意味でなんとか消化するしかない感じではあります。

    レイがパルパティーン

    これについては「8でフォースに血筋は関係ないのに結局血筋なのかよ」という感想が割と見られたのですが、血筋という意味ではあのパルパティーンの孫娘という血筋を裏切ってジェダイの道を進んだわけで、ずっと自分の血筋にこだわっていたレイが乗り越えた壁としての意味は大きいのでは。あとフォースは8の最後でも少年が使っているし、9でもどうやらフィンがフォース使えるらしいという描写があるので、「フォースは血筋ではなく信じるものが得られる」という線もきっちり残していると思う。まあ映画的には8の少年にもうちょい活躍してほしいなとは思いましたが。

    レイがスカイウォーカー

    自分を守ってくれた親の名前じゃないの!? という意見もありつつ、顔もほとんど覚えていない親より、短い時間とはいえ大事なことをいくつも教えてくれたレイアとルークを取るのは仕方なし。親を否定したわけではなく、自分をまもってくれた親も大事な存在だけど、それ以上に尊敬する2人を思ってのスカイウォーカーだったのかと。

    ハン・ソロとランド

    個人的にはウルトラマンで別の兄弟が助けに来たりするの大好きなので、この2人がまた見れたのは普通にうれしい。無理矢理感もそこまでなかったし。

    レンが結局改心

    エピソード7から9までの大きなテーマは「カイロ・レンの厨二感」にあると思っているので、結局「改心したいけど言い出せなかった」という厨二感まるだしのオチは、レンの厨二感が最大の見所であった8の流れをうまく拾ってすごくいい。あの強くてかっこいいのに小物感あふれるカイロ・レンがとてもたまらない。

    レイとレンのキス

    さすがにあれは蛇足かなーとは思った。結局そこなのかよ! という。そしてフィンが言おうとして言わなかったのはやっぱりそういう言葉だったんですかね。結局は別のヒロイン登場しちゃってうやむやになりましたが。恋模様としてはいろいろ微妙だったけど、まあスター・ウォーズに恋愛求めてもな……と言うところもあるかもしれません。

    結局元通りのC-3PO

    R2-D2が信用できないなんて発言、完全に元通りになるよねフラグでしかないので。

    死んでないチューバッカ

    どうせ死なないだろというのは想定内、ただちょっと登場早すぎたけど、あそこまでフラグだったら後で出てきても全然驚かないのでとっととネタバレしてしまってよかったんじゃないですかね。

    復活するパルパティーン

    ここは結構大事なポイントかなと思ってるのですが、パルパティーンの「自分を殺せばお前が皇帝になる」はブラフだったのでは。そういってもレイは結局殺すことができず、レイを助けに来るであろうレンのことまでがパルパティーンのシナリオで、2人そろったところでエネルギーいただくのが狙いだったんじゃないかなと思う。だって自分の孫娘が皇帝になって喜ぶようなタマではないでしょパルパティーン。

    なので実はあの時にレイがパルパティーンの言うとおりたたき切っていたら実はパルパティーンは死んでいた(元々死んでるけど)のかも、という説に加えて、レイを皇帝にするのが当初のシナリオだったけどレンが改心したことで「この2人まとめていただけたら俺が生き返れてよりいい展開!」と方向性変えるのもなくはない。まあそのあたりもうちょっと説明してほしかったなと言う気持ちはありますが。

    最後に

    ストーリー的な矛盾はそこまでないし、暴れ馬だったエピソード8を拾いつつも着地したという点ではすばらしい。あとは本作がよく言えば王道、悪く言えば安直なストーリー展開であることをどう思うかで評価が分かれるのでしょうか。

    ただ個人的にキン肉マンはすぐ超人生き返ってほしいし、男塾で谷底に落ちていったらハッハーンこれは生き返るなってわかるからいいので、王道で安直なことは必ずしも悪いことではなく、好みの問題なのかなと。ナンバリングタイトルは王道であり、シナリオやキャラクター描写はサブのタイトルで、という位置づけとしてはすごくよい着地だったし楽しく見られました。

    ただ、ルーカスがやるかどうかは別として、最初からシナリオをきちんと練ったエピソード7から9を見てみたさもある。エヴァンゲリオンみたいに監督自らリメイクする方法もあるので(実際にはリメイクと言うよりちゃんとした続きという設定もあるようですが)、「シン・スター・ウォーズ」みたいな展開もちょっと見てみたいところです。

    そして余談ながら今回見てきたグランドシネマサンシャイン、音もいいし席も前の人が気にならないしネットでチケット買ったら現地で発券不要だしですばらしかった。これから映画はグランドシネマサンシャインメインで見たくなるくらいいい映画館でした。

  • 【ネタバレあり】映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」見たよ

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    公開当初そこまで興味はなかったものの、ネットや自分の身の回りで賛否両論渦巻いているのを見て興味が沸いた本作。そうじゃなかったらさらっとスルーしてたのかもなという映画ですが結果からすると見てよかった。

    以下ネタバレ満載で突き進みますので、情報入れずに本編楽しみたいという人はご遠慮ください。自分もできるだけ事前情報耳に入れずに見たつもりだったのですが、それでも多少知ってしまっていた要素を取り除いて本当にピュアに見てみたかったなー、と思ったので。

    作品としてはドラクエVが3DCG化されている、そしてどうやら最後のオチがとんでもない、というところまでが見るまでの事前情報だったのですが、見終わった後の感想としてはドラクエV部分がひたすらに退屈で、このまま退屈ストーリーで終わったらたまらんな、というところへとんでもなく雑なひっくり返しが来て、退屈なまま終わるよりはよかったというよりあれで終わらなくてよかったと安心した、というところです。

    前半については冒頭のゲーム画面といいストーリー運びといいドラクエVを知ってる人前提でストーリーが進行していて、そのせいかドラクエVを思い切って料理できずひたすらドラクエVのシナリオとキャラを追いかけるも、そんなことやるには映画の時間が足りなすぎて結果全部が全部薄まっており、場末のキャバクラ並みにドラクエVをひたすら水で割って飲まされているようなそんな感覚でした。

    基本的に原作ものはひたすら忠実に再現するか、原作から外れるならそれだけ意味のある作品にして欲しいしそのときは無理に原作をなぞる必要はない、というスタンスなのですが、本作に関してはドラクエVの呪縛から逃れられず思い切ったシナリオ変更がほぼない状態で、一方でストーリーがぶつ切りなこともあってドラクエVである意味もあまり感じられなかった。あれ、ビアンカやフローラやゲマやらが出てきたから補正できたけど、あれが見たこともないキャラクターで構成されたストーリーだったらキャラクターへの愛着も全然わかないのでは。

    そんな薄っぺらい前半が、これまた「この世界は架空の存在だった」という今まで何度使われたんですかそのオチはそもそもゲーム映画最後のオチが不評という時点で大体想像ついたわみたいなものだったわけですが、前半が相当退屈だったがゆえにあんなオチでも「やっと退屈パートが終わった」という安心感と、それにしても今時ゲームを一方的に敵にする陳腐なシナリオで最後ひっくり返すのかよという面白さで最後はずっとニヤニヤしながら見てました。

    結局のところ最初があまりにも退屈なのはVRでひっくり返すから、と言えばまあ理屈も通るし、最初からまとわりつくスライムの伏線もちゃんと回収するし、でそこのつじつまはそれなりに評価。ただ、明らかにこれはゲームだぞ、何周目かだぞ、とキャラクターが言ってくるのは「ほらここが伏線だぞー」と言われているようでちょっと興ざめでしたが。基本的にWebサイトとかも「ここがおもしろいんだぞーわらうとこだぞー」といわんばかりに大文字とか装飾されている文章って苦手なんですよね、面白いところがどこかは文章で読ませろよ。

    というわけで作品として面白いという評価では決してないものの、最初があまりにも退屈で、それを凡庸なオチとはいえ最後にひっくり返してくれたというところでは痛快だし、それなりに理屈も通ってるので、少なくとも最初のファンムービーみたいな世界観で終わられるくらいならよっぽどよかった、というのが全体を見た感想です。

    なんというかコース料理でひたすら甘いレトルト料理みたいなのを続けて出されて、おいおいこのコースこのまま行くのかよ! と思ったら最後で麻辣系の担々麺が出てきて、おお! やっと甘いの終わるのか! この担々麺もそこら辺にありそうな味だけどな! という料理で締めくくったみたいな感じでしょうか。よくわからんかもだけど。

    そして断固フローラ派として一点前向きに褒めるところとしては、見る前から気になっていた「結局フローラなのかビアンカなのか」問題には敢えてけりがつけられなかったということ。いや前半ではフローラ選ぶのが自己暗示みたいなストーリーになってて、それいうならパッケージに描かれているだけでヒロインと思い込まされているビアンカのほうがよっぽど自己暗示だろうが! と憤っていたのですが、結果としてそれは単なる1プレイヤーが選んだ選択肢でしかなかった、という着地をしたおかげで、今回のストーリーも「1プレーヤーが選んだビアンカ」のシナリオにおちついて、決してフローラが二番手ということにはならなかった。ドラクエVはどんなに前情報があろうとも結婚相手を選ぶ時点では対等でありそこはプレーヤーに委ねる、というところが醍醐味だと思っていたので、そこを崩されなかったのはフローラ派としてもドラクエVファンとしても一安心。

    とはいえじゃあなぜフローラは勝手に暗示を解こうとしたのかは謎だし(好意的に解釈すればマーサも自我が芽生えているので、キャラクター全般に何らかのAI要素が働いているのかもしれない)、ブオーンが仲間になる展開は面白かったけど仲間になるまでの説得力が薄いし、全般的に見る人が持っているビアンカ、フローラのキャラクター像なしに映画の中のキャラクターだけ見てても全然キャラが立ってないというあたりでもいろいろ雑な映画だなとは思うわけです。

    そしてそもそもこの映画は何が言いたくて何を伝えたくて作ったのかがわからなくて、結局「ドラクエの映画を作れと言われたから」以上のものが見えない。最後のオチをメッセージにするならあまりに唐突すぎるし、それをユアストーリーとするなら前半のストーリーをとっとと終わらせてマトリックスみたいに現実世界をもっと描けばいいと思うし、ドラクエVのファンムービーとするならやっぱり後半は蛇足なわけで、映画としては実に凡庸以下だなとは思います。

    それでもこうやって賛否両論が吹き荒れる映画の醍醐味は上映中に行ってこそで、ネタバレできるだけせずに避けてきた映画の感想やレビューをむさぼり読むと「ほう! なるほどこう考えるのか!」という驚きがあってそれが楽しいので、その一点において映画として見に行ってよかったな。まだまだほんのさわりくらいしか読めていないので、いろんな感想をひたすら探してむさぼり読みたいと思います。

    個人的には本作が松本人志監督の「大日本人」に通じるところもあったなあとも思う。ただし大日本人は、劇場で高い金を払った観客に対してああいうオチで占めるというところまでが1つの様式美であって、だからこそあれは劇場で見るべきであり映画というより「松本人志の世界観で映画を遊ぶとこうなる」という1つの例として面白かったのですが、本作についてはそこまでの意図も見られず使い古されたオチで終わるあたり、似て非なるものではあるのですが。

    あと、リュカ問題についてはもうこれ圧倒的にアウトでしたね。主人公の名前がリュカというだけならまだしも、現実世界において自分がずっと使い続けてきた名前だった、という設定にしたことでそれはもう単にキャラの名前にしただけでなく、現実世界においてリュカという名前で存在した小説がベースになってるじゃないですか。そりゃさすがに久美沙織先生も悲しみますよ……。このあたりの経緯はご本人がとても丁寧に文章でまとめているのでそちらもお読みください。

    「小説ドラゴンクエストV」の著者,久美沙織氏が,映画「DRAGON QUEST YOUR STORY」製作委員会を提訴 – 4Gamer.net
    https://www.4gamer.net/games/281/G028186/20190802147/

    そして最後に思うのはドラクエV好きの古参はいいとして、ドラクエも大して知らない子供たちはあれ見て楽しめるのかな。「あんなの子供が置き去りだ!」と決めつける気はなく、純粋に前提知識がなくドラえもんやポケモン見る感覚で映画館に行った子供たちは果たしてどういう感想だったのかな、というのがちょっと気になるところです。

  • 話題の映画「カメラを止めるな!」見てきた

    話題の映画「カメラを止めるな!」見てきた

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    話題の「カメラを止めるな!」見てきました。ネタバレ禁止系の映画は早く見にいっておかないといつネタバレされるかもわからないし、見た人の感想も楽しめないしね。

    映画のタイトルとポスター画像、「前半は退屈だけど後半その評価がひっくり返る」という前情報のほか、相当に高い周囲の評判を踏まえての視聴でしたが、その高いハードルを超えて面白かった。伏線回収も見事だし、序盤の退屈さが最後にすべて面白さにつながる構成もすばらしい。この感じがあるうちにもう1回ちゃんと最初から見たくなる。ゾンビ映画ということで敬遠している人もいるみたいだけど、そこまで恐い作りにはなってはいないのでがんばって見にいって欲しい。

    と、非常に面白い作品である一方、見終わった後に「やばいぞおもしろいぞなんだこの作品は!!!!!」みたいな強烈な感情には襲われなかったなーというのが正直なところ。「あーおもしろかった!」というテンションが近いかな。

    面白さの感情は人によって異なるのですが、どうして自分の中でそこまで行かなかったかというと、伏線の回収がよくできているがゆえにナゾトキ要素が強かったというか、後半の流れが答え合わせに近くて、面白いけど「あーなるほど!」という感想で着地したのがその要因かもしれない。

    見た人の感想を聞いてみると、ほとんどの人が「あそこはああいう仕掛けだったのか!」という伏線の驚きなことが多くて、感想言い合っても正解を確認しあっているだけ、みたいになることが多かった。もちろん親子愛とか仕事にチームで挑む情熱、みたいな要素もあるんだけれど、全体的には映画を見た人の感想が「そういう意味だったのか!」という画一的な感想になりがちな映画だったなとも思う。

    とはいえ映画としてはすごい面白かったので決して作品を否定しているわけではないのですが、自分の中で映画は感想ひとそれぞれ、それを人と共有して、感想が違っても同じでも面白い、みたいなところに楽しみを持つタイプなので、見た人の感想がほぼそろい踏みしてしまうところにちょっと物足りたさを感じてしまったのかもしれない。重ね重ね贅沢な話ですが。

    そして作品の感想以上にこの映画でいろいろ考えてしまったのは映画の興行とマーケティングについて。たった2館から全国展開するまで話題になったこの作品ですが、毎回の舞台挨拶や有名人のSNSといった要素もあれど、一番大きかったのは秀逸な伏線回収による「ネタバレ禁止」要素だと思う。そしてクチコミで広がるにはここまで綿密なシナリオを作り込まないと広がらないのか、と思うと、面白い映画があってもそれが世に広まるのは大変なことだなあとしみじみ痛感しました。

    エンディングのテロップ見ると、この映画もご多分に漏れずクラウドファンディングやってたのですが。

    上田慎一郎監督による長編映画『カメラを止めるな!』(仮)への製作上映支援プロジェクト! – クラウドファンディングのMotionGallery
    https://motion-gallery.net/projects/ueda-cinemaproject

    プロジェクトの達成金額は150万円で、300万円で作った映画という予算からすると大きく見えるけど、リターンの内容を見るとほとんどのリターンで劇場鑑賞券が含まれているので原価も結構大きい。映画関係者だとこういう鑑賞券も安く入手できるのかもしれないけど、「この世界の片隅に」では一切鑑賞券をリターンしてなかったこと、クラウドファンディングで支援した映画ならそりゃ見にいくよね、ということを考えると、支援者が見に行くであろう分の売上が加算されなかったことに。

    片渕須直監督による『この世界の片隅に』(原作:こうの史代)のアニメ映画化を応援 | クラウドファンディング – Makuake(マクアケ)
    https://www.makuake.com/project/konosekai/

    この映画の場合は大評判でブレイクしたので結果オーライなのですが、他の映画でクラウドファンディングした場合、こうやって鑑賞券をリターンしてたら結構厳しかったなあと。余談ながらクラウドファンディングの中でスタッフロールがかなり高めの金額設定になってるんだけど、この映画は人数が少ないからとはいえスタッフロールがシンプルなのも個人的には好感触で、そもそもあんまりスタッフロール長くしたくない、みたいな思いもあったのかな、と勝手に考えをめぐらせてみたり。

    カメ止めは圧倒的な大成功事例なんだけど、そこまでいかないまでも面白い秀作はきっとまだまだ埋もれていて世の中届いていないんだろうなあとか、ついつい余計なことばかり考えてしまいました。

    とはいえ面白い映画を発掘するほど映画に詳しいわけでもないので、クラウドファンディングで映画投資みたいな仕組みがあったらいいのにな。毎月数千円とか年にいくらとか払っておいて、集まったお金を使って面白そうな映画に投資するみたいな。各作品がプレゼンして、まとめて1位が総取りでもいいし、毎月支払ったお金の中からユーザーが振り分けてもいいし。それだけだとなかなかお金払わなそうだから、映画館とタイアップして月に1回だけ1100円で映画が見られるチケットをつけておく、とかね。

    有名な俳優が出てなくてもこれだけ面白い映画が見られるというところにインディーズ作品の可能性を感じたけれど、その収益を得るためには話題を集めなければいけない。その話題性を集めるには作品そのものにクチコミ要素が必要、だけどすべての映画がそんなにクチコミ要素に適した作品ばかりじゃないのが難しい。

    映画もテレビも最近は有名人の起用や有名作品の映像化ばかりで、正直あまり面白みを感じなくなっている中で、カメ止めのような面白い作品が産まれたことはとても嬉しいと同時に、こういう作品の良さが先にある映像作品が世に出る仕組みが欲しいなあ、と映画そのものとは違う感想を強く抱かされた作品でした。

  • 映画「バクマン。」見てきた(ネタバレあり)

    映画「バクマン。」見てきた(ネタバレあり)

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    原作は連載スタートから「これは面白い!」と注目、コミックも全巻取り揃えている大好きなコミックの映画化ということで。主人公2人のキャストも当初は「逆じゃね?」と思ってはいたものの、その後の予告や映画情報などを見るうちに「あ、むしろこっちでいいんだろうな」と納得してはいたものの、人気コミックの映画化は当たり外れ多いので過度の期待することなく当日を迎えました。

    image

    原作がある作品は「原作と違う!」と憤る人も多いけど個人的には原作と違っていてもその映画の中で筋が通っていたら納得するタイプ。たとえばデスノートなんかは最後の対決も原作から大幅に変えてきたけど、ちゃんと筋が通っていた上にニア・メロまでもつれ込むことなくLと月で決着つけられたという流れはとてもよかった。

    そういう意味でいうとバクマン。は正直消化不良というか、原作のいいところをあまり落とし込めずに、なんとなく原作を映画にしましたというよくあるパターンだったかなという印象。以下は感想をキャラクターごとに。

    サイコー

    木訥だけど熱血すると突っ走るキャラは佐藤健でよかった。緻密にシナリオをこねくり回すキャラとしては神木くんのほうが印象あってるので。キャラ的にはそんな不満はないんだけど、サイコーが倒れる瞬間初めてシュージンが「サイコー!」と呼ぶのは唐突すぎるかな。原作知ってる人はいいけど、映画の中では一度も「サイコー」なんて呼ばれることがなかったので、どこかでもうちょっと「サイコー」とか「シュージン」とやりあうところは欲しかった。

    シュージン

    キャラ設定の不満で言うと一番かも。原作では勢いでコンビを組むとは言ってしまうものの、サイコーはシュージンの能力を疑っていて、2人で話しをしたりやり取りする中でシュージンの能力を認めるからちゃんとコンビを組むことになる。原作通りにしろという気は無いけど、映画だと突然「コンビ組もうぜ!」と言ってきただけで、あとは亜豆との衝撃のやり取りで約束しちゃったから仕方なくという感じで、2人の信頼感が前半で感じられず腑に落ちないままマンガだけができあがっていく。後半でシュージンが新しい原作のネームを考えついた辺りでやっとサイコーが「すごいな!」という評価をするんだけど、そういうのをコンビ組む前、せめても最初の作品創っている間に欲しかった。原作だと最初に「学年成績トップの高木」というくだりがあるんだけど、そういう説明も無くただたんにクラスメートとして登場したってのもあるかも。

    亜豆

    小畑先生のイラストを活かすために似た人を選んできたんだな、と思ったけど、痛烈なまでに声がだめ。初めての声優役として登場したときの声が全然しっかりしてない棒読みで「声優目指してるレベルじゃないだろ」と冷めてしまった。2人の出会いをアレンジして、普通の高校生に仕上げたり、マンガの台詞を読み上げたりというのはよかったんだけど、声優を目指しているというキャラにリアリティ感じられない声だったのが残念。

    エイジ

    猟奇的な感じがしっかりでてていい感じだった。原作ほど天然ではないけれどそれは映画なりのアレンジの範囲内だし、対決ものっぽく仕上げるのにああいうキャラになるのはありかな。

    福田

    ヤンキー的なキャラとしてはばっちり。兄貴分っぽいところもしっかり出てるし。

    中井

    青木さんをなかったことにして中井さんのみにしたのはわかりやすくて英断だったと思う。同じ理由でカヤが登場しなかったのもわかりやすかった。

    平丸

    これも納得できないキャラ設定。当初は原作通りお金や楽することしか考えないキャラ設定なのに、なぜ主人公たちを助けるのか。繰り返しながら原作と違うのは全然ありだし、正義キャラに目覚めるでもいいのですが、それならそういう背景をどこかに描いて欲しかったし、もしくは福田あたりに合コン紹介するからと言われてがんばった、みたいな設定が欲しかった。「後で手伝ってもらえるから」というのは結局労力を割いている時点で、楽してお金儲けしたいキャラとは全然合わないし。

    服部

    2人を助けるスーパー参謀みたいなキャラが全然なくなってしまって、あんまり才能も見受けられない情熱だけある若者っぽいのは原作ファンとしては残念。本作のコンセプトが「友情・努力・勝利」なんだけど、ちょっとそのフレーズがうるさすぎた感もある。

    佐々木編集長

    リリー・フランキーというのはあざといかなと思いつつ、役どころとしては普通かな。

    川口たろう

    最高の一言。よくあの人をキャストに選んだなというか、あの映画の主人公はもう川口たろうだろと思わせるほどの存在感だった。

    キャラ設定が微妙というもありつつ、全体的に原作の良さが出せてないなというのが見終わった感想。どうやったら連載できるのか、アンケートの順位を上げるには、高校生でも連載できるよう前もって連載を貯めておこう、みたいなバクマン。ならではの計画性、作戦みたいなものがちっとも出てこない熱血マンガになっていて、これ別にマンガじゃなくても成り立つだろうなというお話にしあがってしまったなと。とはいえこれだけの内容を2時間に収める方が難しくて、マンガ家デビューまでで前編、デビューしてからエイジと真剣勝負する後編、だったらもうちょっとバランスよかったのかもしれない。

    連載作品に「この世は金と知恵」を選んだのは、邪道の王道ではなく邪道だけで進むと割り切った点ではありかな。ただ、学生生活からヒントを得るならPCPのほうがしっくり来たかなとは思うけど。

    最後のスタッフロールは凝り過ぎなくらい凝ってたんだけど、本編がいまいちだっただけにスタッフロールが懲りすぎているのが落差を感じた。作ってる方は楽しかっただろうなあれ。

    別にバクマン。である必要はない映画だったけど川口たろうだけは神がかってすばらしい、というのが最終的な感想ですはい。

  • 映画「ベイマックス」見てきた(ネタバレあり)

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    普通に面白かったです。CMが感動方向でアピールしているのに実際はアクション映画ってのはまさにその通りで、Mr.インクレディブルが好きな自分にとっては好みのテイストだった。アナと雪の女王よりは共感ポイント多いしこっちのほうが好き。殺伐としてないキック・アスみたいな印象です。

    ヒーローの中ではイエローの変身がかっこよかったな。伏線好きとしてはドラゴンの看板回しがあとで武器になるってのはいい設定だった。あれ3Dでゲームにしたら楽しそうだよなー。ちょっとプレイしてみたい。

    こまけえことはいいんだよと言わんばかりに設定よりもストーリーや感動を先行するのも実にディズニーらしくて、お前最初簡単にバッテリー切れてたのになんで後半あんだけ動き回れるんだとか、脳波で動かしてるなら手を動かさんでも操作できるだろうよとか、そもそもカード抜いてたら暴走モードになるから手に握らせられないんじゃないの?とかいろいろ疑問はわくんだけど、もうそれはそういうものだからよしという潔さを感じる。アナと雪の女王も設定言い出したらひどいしねw

    ストーリーもちょっとした裏切りはありつつ予想の範囲内。あれ実は悪の正体が実の兄だった! なんていうMother3展開来たらどうしようとドキドキしてたんだけど、さすがにディズニーでそこまではやらないよなー。仲間だと思った人が実は裏切るというテンプレもアナ雪そのまんま感を感じた。

    個人的な感傷としては、ストーリーで兄貴を殺さなくてもよかったんじゃないかなー。最後に教授の娘が異空間から助けだされるけど、兄貴も異空間実験で死んだことになってて最後生き返ってくれたらよかったのにと思った。基本的にご都合主義で展開するのにそこだけはけっこうシビアだったなー。そして異空間突入はなんだかインターステラ−だった。

    良かったのは最後のエンディングで、スタッフロールもアニメのおかげで結構楽しめるし、あのマンガテイストのストーリーもすごくいい雰囲気が出ていて、あのイラストタッチで続編作って欲しいほど。あと、途中でキャッ党忍伝てやんでぇっぽいロボがいたのも嬉しかった。考えてみればサンフラントウキョウとエドロポリスって名前のセンスも一緒だし、海外でてやんでぇ人気あるみたいだし、結構影響受けてるところもあるんだろうか。

    ディズニーといえば歌も大事な要素なんだけど、AIはちょっとごめん感情移入できんかった。英語も日本語もできるってことで選ばれているんだろうけど、日本を表現する歌としてなんかしっくりこないんだよなー。まあベタにSUKIAYAKIとか歌われるよりよっぽどましですけども。

    全体的におとぎ話感あふれるいつものディズニー。いくつか感想で「あんなの作られたら日本のアニメはおしまいだ!」とかいう嘆きを見たけど、ロボットかつ日本が舞台っってことでそうは見えるものの、中身はまんまいつものディズニーなんでそういう心配はないというか、その心配するならトイ・ストーリーとかもっと前におしまいになってるだろうし、ストーリーと感動優先で設定や世界観はおざなりというあたりは日本アニメと真逆だと思うし。

    日本アニメはクオリティの心配よりも規模の問題で、そろそろパッケージビジネスだけでなく世界をターゲットにしてビジネスを構築できるかってとこなんじゃないのかなーと素人考え的に思った次第ですはい。

  • デヴィット・フィンチャー最新作「ゴーン・ガール」見てきた(ネタバレあり)

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    昨年は割と映画見たのにあんまり感想のこさなかったなーという反省もあって今年はちゃんと記録に残そうと思う、というのを新年の目標におきつつ、映画の日効果を狙って前から気になっていたゴーン・ガール見てきました。

    映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト
    http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/

    夫婦やカップルで見ないほうがいい、という評判だけ先に聞いていてどんなもんじゃい、という心づもりで見に行ったんだけど、別に夫婦とかカップルあんまり関係なかった。後述するけどあれを見て夫婦やカップルの危機を覚えたという人はどこに恐怖を覚えたんだろう、と逆に気になった。

    映画の見方は人それぞれですが、この映画に感じたのは夫婦の話というよりもかわいそうなエイミーの物語だなということ。母親が自分を題材に「Amazing Amy」なんていう本を書き、それが大ヒットしたために常に本と自分を比べられ、完璧な自分でいることを強制される。けれど自分はそんなに完璧じゃないという違いに悩みつつそれでも完璧であろうとするがあまり、自分と付き合う相手にも完璧を追い求める。その結果として彼女は自分も相手も完璧であることがすべてにおいて優先され、結果としてサイコ的な行動も平気で取れるような人間になってしまう。

    舞台は浮気した夫とそれを知って失踪した妻ではあるものの、本質的にはエイミーがこれほどまで完璧にこだわる性格でなければすべての事件は起こらなかっただろうし、見ていても娘を自分の仕事の道具として使う母と、その偏った愛情で心が壊れていくエイミーばかりに目がいってしまった。

    その後の夫婦生活の不和も、エイミーの性格をさておきとしても、夫婦の不和というよりそもそもコミュニケーションの問題だったり、自分たちではどうしようもない世の流れにたまたま巻き込まれてしまったというだけの部分も多い。

    最初は幸せだった結婚も2人が失業することでぎくしゃくしはじめますが、失業に関してはどうしようもないし夫婦というものがそろって失業すると怖いね、ということではあれど夫婦の本質的な話ではない。失業によってお金に困り、妻が持っていた財産を勝手に使ってしまうことで夫が怒り、一方で夫が自分の母の介護のために引っ越したことを妻は快く思っていないというのが2人がすれ違う最大の要因ですが、こういう人生における大事なことを相談もせず勝手に決めちゃいかんよね、というのは夫婦がどうとかいう話とは別だと思う。

    その後夫は若い女と浮気をし、それを妻が目撃してしまったことが妻を狂気に走らせるきっかけではあるのですが、浮気は悪いという大前提はありつつ、すでに妻から心が離れていて離婚を考えており、若い女は浮気を超えて新しいパートナーとしてちゃんと考えていたということを踏まえると、順序が違うとはいえ情状酌量の余地はあるかなとも思う。

    つまりそもそも妻の性格が大きな問題であることと、それに加えて2人のコミュニケーション不全が引き起こした問題であって、失業すると大変、大事なことを決めるときはちゃんと相手と相談しよう、浮気はするもんじゃないという普遍的な話はあれど、夫婦ならではの怖さという話ではないかなと思った。

    どこか1つ歯車を変えられるなら、やはり妻のお金かな。大金を親にあげてしまったことではなく、相談する前にあげちゃったよという報告でしかなかったころから2人がギクシャクしたことを考えると、人生における大事な計画はちゃんと相談しようね、そしてそれ以上に子供を育てる時に完璧を強要しちゃいけないよ、ということを感じた映画でした。

    そんな脇の話はさておき映画そのものの楽しさでいうとさすがデヴィット・フィンチャーというか、かなりの長さなのに時間を感じさせずストーリーに引きこまれてあっという間に終わっていた。特に途中から妻の視点に移るあたりは一気に話に引きこまれたし、夫を殺人犯にしたてあげて自分は失踪、で終わるかとおもいきやまだまだストーリーがどんでん返しを続けるジェットコースター感もさすがというかんじ。

    結局妻の完璧な計画は、うっかり大金を所持していることを知られてしまうことで台無しになり、それがなければあの殺人は起きなかったのに、と思いつつ、失踪がうまくいきすぎて気が緩み、宿泊先の知らない人とコミュニケーションしてしまうあたりの気のゆるさが、結局エイミーは完璧ではなかったねというメタな展開になっているのも面白かった。

    夫は妻の失踪中に押しかけてきた浮気相手を断り切れないという本当にダメ男ですが、心の底から愛せなくなった妻なのに、自分の子供が生まれるということを知っただけで人生の覚悟を決めて手をつなぐという点では、ダメ男ながらも最後はふんばった。ああいう終わり方させるフィンチャーのダークさも好みなので映画としての評価は高いです。ただ、セブンやファイトクラブのような「えええええええ!」という裏切られ方はなかったかな、という点でフィンチャー作品の中ではさほど高い評価ではないかなというのが着地点でした。

  • 映画「アナと雪の女王」ネタバレあり感想

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    もうそろそろ一通りの人が見ただろうということで。ちなみに見たのは松たか子の歌聴きたさに吹替え版です。歌手としての松たか子ファンなので。いや女優としても好きですけど、対猪熊柔で言うところの立ち技と寝技くらいの違いはあるかもしれぬ。

    アナと雪の女王 | ディズニー映画
    http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki

    以下はざっくりよかったところと残念なところを。

    よかったところ

    松たか子の歌。全般的によかったけどやっぱり「Let It Go〜ありのままで〜」に至るまでの過程を含めたあの歌のシーン。子供の頃から部屋に閉じ込められ、全然自分らしいことをできなかったエルサが、城を追われることで逆に自由を手に入れるというストーリーと、あの開放感あふれる歌のマッチングは映画の中でも最高の盛り上がり。ここだけなら本当にトップクラスにすばらしい映画で、もうここで終わってよかったかもしれないw

    何がいいって、さっきまで女王として苦しんでいたエルサの声そのままで歌がつながっていくのがいいのよね。ここが別のうまい人の歌に切り替わってもこうはいかなかっただろうなあと思って、つくづく松たか子のすばらしさを実感します。そういう意味で最後のMay J.バージョンはうまいんだけど全然心に響かなかった。

    特にCMであれだけ流れていた曲をあのタイミングで入れてくるあたり、プロモーションを逆手に取った実にうまい演出。マトリックスのときもCMの映像はあくまでバーチャルの世界で、実際の世界は全然違うという演出があったけど、それに勝るとも劣らないうまさだった。

    SAYAKAあらため神田沙也加も演技に歌にすばらしい。SAYAKAは実にいい声してるよねー。デビュー当時から好きだったのですが歌手業では思ったほどの成功収めることできなかったものの、磨かれた歌声がこうやって活きるというのはすばらしい。個人的にSAYAKAといえばこの曲が大好きであります。

    最後のどんでん返しもよかった。個人的な笑いのツボが裏切りだったりすることもあり、最後の最後で「王子でもねーしクリストフでもねーのかよ!」というどんでん返しはすばらしい。けど結局あれはエルサの愛だったのかな、それともエルサを思うアナの愛が自ら溶かしたのかな。まあそのあたりはあまりつっこまないほうがいいのかもだけど。

    いまいちだったところ

    全体的なストーリー設定。エルサを閉じ込めるところまではいいとして、王が亡くなったあとの3年間何してたんだよとか、魔法が使えてもただの人間なのにどうやって雪山でごはんも食べずに生きるんだよとか、なんでクリストフはそこで城に向かえたのかとか、そこで外に出るアナはあきらかにおかしいだろとか、ストーリーありきで設定が割と雑だった。

    これはもう好みの問題だけれど細かい設定があまいとちょっと感情入らなくなるタイプなもので、そういうところが雑すぎて映画見ながら正直さめちゃった。すべてを現実的に解決する必要はなくて、たとえば雪山に閉じこもったエルサだったら、自分で作ったゴーレムに木の実をとに行かせるでもいいし、空白の3年間は頼りになった爺がいるとかいう話でもいいんだけど、3Dが美しいがゆえにおとぎ話といえどもシナリオの現実味のなさが目立った感あり。

    あと雪だるまがいかにも人気取りキャラで、スター・ウォーズでいうところのジャー・ジャー・ビンクス感あったのも疲れた。あれだったらドワーフのほうがまだいいキャラかなあ。

    歌もオチもよかったけどシナリオ的にあまり感情移入できずで、手放しで高い評価はできないかなというのが結論。実はトイ・ストーリーシリーズを見たことないのですが、大人でも泣いてしまうというほど評価の高いトイ・ストーリーを本当に上回るほどの作品だったのかなと逆にトイ・ストーリーへの興味が高まる昨今であります。

  • 松本人志監督作品「R100」劇場で見てきた

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    もうすでに公開は終了し、DVD/Blu-rayがまもなく発売というタイミングではありますが自分の記録として一応ね。

    B00H7PBAEQ
    R100 [Blu-ray]

     

    公開直後から大コケとの報道に加え、数々の松本映画ファンが「さすがにもう無理」と辛辣な批評しているのを見て、逆にどんだけつまらないのかわくわくして見に行ったのですが、結果としてはさや侍より上、しんぼるを僅差で超える着地になりました。ちなみに松本映画の個人的評価は大日本人>>>R100>しんぼる>>>超えられない壁>>>さや侍、というところです。

    映画はそこそこ好きではあるものの、松本映画はあまり映画として期待していないというか、映画というパッケージで松っちゃんが何をやらかすのか、ってところを期待していて、その点で大日本人の最後のオチはひどすぎてすばらしかった。一方でしんぼるは大日本人なぞってしかいないなーというのと、さや侍は普通の映画作ろうとしすぎて松本映画である意味すらなくなっちゃったなと。

    話を戻してR100、酷評されてはいますが素直に笑っちゃったので評価は高いです。とはいえ全編にわたって大爆笑の嵐というのではなく、笑えたポイントがいくつかあったというレベルですが、それでもまったく笑えなかったしんぼるにくらべれば十分に素晴らしい。

    R100を酷評していた人の話を読むと、番組中盤で出てくる自己否定みたいなのが気に入らないみたいなのですが、あんまし個人的には気にならないなあ。笑いにつながるものならなんでもやってやれ! ってタイプの人なので、それが受けるなら何でも使ってやれってほうが松本イズムなんじゃなかろうか。片桐はいりの登場シーンおよびその後の場面転換は映画館で「ブホォ!」と吹いちゃったレベルで面白かったのでそれはそれでよしです。

    あんなのSMじゃないっていうのも別にSM描いているわけじゃなし、全然面白くない前半も、あれはおもしろさを理解されないことが映画の本質なのでそれも当然かなと。そこに不満を覚える人は多いみたいですが、でもあれがちょっとでも面白かったら天才の孤独は理解されない、って本筋からずれちゃうので、ズルと言われようとなんだろうとあれはあれでいいんじゃないかな。

    とはいえこんなもんで満足しているわけではなく、2時間にわたって大爆笑し続けたという経験は松本映画では体験していないので、今後も引き続き松本監督作品は劇場で堪能したいと思います。

    ちなみに映画館は大混雑というほどではないですが、上映終了間際の割にはぱらぱらと人入っていたし、結構笑い声も聞こえて来ました。なんだかんだいってファンは楽しめているので、とりあえず劇場数もうちょっと絞ろうぜw

    余談だけどこないだガキ使で見たチキチキ利きラー油の回、ただラー油を食べて感想言うだけなのに松っちゃんが神がかったおもしろさで、「ああこの人はパッケージのおもしろさよりリアルタイムで空気読んで笑い作ってくほうが得意だよなあ」って改めておもったりもしました。

  • 2013年見た映画ランキングまとめ

    2013年見た映画ランキングまとめ

    ※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

    今年は割と映画いろいろと見ているものの感想をブログで書いてなかったなー、というところでまとめエントリー。進撃の巨人作者がブログで書いている「見た映画ランキング」が結構面白いので、インスパイアとばかり面白かった順に感想書いていきます。

    HK 変態仮面

    B00CF8HFT4
    HK/変態仮面 アブノーマル・パック[DVD] (2013)

    そもそもがアホな原作を忠実に再現、チープなCGも作品にぴったり、そして何をさておいても安田顕の快演が最高。コミック原作の映画化は残念になることも多いですがこれは見事な映画化でした。

    映画「HK 変態仮面」が最高すぎた – カイ士伝
    https://bloggingfrom.tv/wp/2013/04/12/8910

    中学生丸山

    4863363184
    中学生円山オフィシャルブック 中学生円山本 (TOKYO NEWS MOOK 361号)

    あまちゃんという健康すぎるクドカンの反動かもしれませんが、もう見る人によってはドン引くであろうクドカン負のワールドが出まくった本作。あまちゃんでクドカンファンになった人がそのテンションで見に行ったら卒倒しかねない内容ですが、こっちのクドカンのほうが個人的には好み。テレビを離れた映画の世界でやりたいことやった感あふれる怪作です。

    風立ちぬ

    B00CHDM89E
    風立ちぬ サウンドトラック

    上位があまりに変態すぎる作品ばかりですがやっと映画らしい映画。いろいろ文句言ったりはしたものの、全体で並べてみるとやっぱり楽しんでたなあと改めて。宮崎駿作品は求めるクオリティが高すぎるがゆえにいろいろいってしまうというのはありますな。

    宮崎駿最新作「風立ちぬ」見てきた(ネタバレあり) – カイ士伝
    https://bloggingfrom.tv/wp/2013/07/29/10965

    風立ちぬは他の人の感想が面白い – カイ士伝
    https://bloggingfrom.tv/wp/2013/08/15/11099

    岡田斗司夫の「風立ちぬ」評が鳥肌立つレベルで素晴らしい- カイ士伝
    https://bloggingfrom.tv/wp/2013/08/23/11182

    テッド

    B00CPGK9LM
    テッド 俺のモコモコ スペシャルBOX Blu-ray&DVD (限定生産商品)

    変態作品ばかりが上位に集まっていますがそういう趣味ではありません。むしろ海外の下ネタはどぎついのであんまり好みじゃないのですが、テッドはかわいらしいクマが織りなす下ネタというギャップに加え、主人公とテッドの友情物語が普通に面白かった。あと有吉の吹き替えが聞きたくて日本語で聴いたのもよかったかな。実はぬいぐるみ欲しさでBlu-rayも買ってるのでそのうち改めて見ます。

    パシフィック・リム

    B00F3WXFIE
    パシフィック・リム ブルーレイ&DVDセット (3枚組)(初回限定生産) [Blu-ray]

    ストーリーは二の次、ただただ巨大ロボットと怪獣の戦いを楽しむためだけの映画。この映画にストーリーだの設定だのいうのは無粋ってのはとても同意です。惜しむらくは時間が合わずに豪華声優による吹き替え版を見られなかったこと。これもBlu-rayで吹き替え版見ないとだー。

    ドラゴンボールZ 神と神

    B00D0Z2J10
    ドラゴンボールZ 神と神 [Blu-ray] (2013)

    鳥山明が脚本を手がけたことでも話題になった本作。実際見てみるとおちゃめなベジータを含めて前半はギャグシーンが多かったんだけど、確かに最初の頃のドラゴンボールってこうだったよねえと改めて思える作品。後半強さのインフレ化が進みすぎてしまい格闘メインのマンガになってしまったドラゴンボールに対するアンチテーゼな要素も感じました。スーパーサイヤ人ゴッドへの変身の仕方も雑でいいよねw

    劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

    B00DV29X3E
    劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。Original Soundtrack

    とってもいい作品ですがテレビシリーズありきだなあというところで順位は低め。映画最大の山場もテレビの再編集個所だったからねえ……。うまくまとまってはいるものの、卑屈だったじんたんが成長していくストーリーはやっぱりテレビ版のほうが堪能できるかなと。

    劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ

    B00DUCND22
    劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ 超豪華版(初回限定生産版) [Blu-ray]

    原作は大好きですが劇場版はちとストーリーにあまり入り込めなかったもので。ただ、テレビシリーズだけではなくゲームのマルチシナリオを全部楽しみ、DVD特典の25話まで見た人だけが楽しめるシーンとかもちょこちょこあり、基本的には今までのシュタゲを楽しんだ人向けの作品という印象。むしろ新作ゲームのほうがよっぽどいいシナリオでした。

    シュタインズ・ゲートファンは劇場版見るのもいいけど新作買った方がいい – カイ士伝
    https://bloggingfrom.tv/wp/2013/04/26/9042

    アイアン・フィスト

    B00FSDEJ3I
    アイアン・フィスト [Blu-ray]

    クエンティン・タランティーノPresents、「キル・ビル」の音楽を努めたRZAが監督と脚本、主演を務めた映画。両腕を切断された男が鉄の腕を手に入れて敵を倒すというシンプルストーリー。順位どうこうではなくB級映画はB級としての楽しみ方があるのでそういう意味では十分に満足。ただ、タランティーノ的な残酷さが苦手な人は避けた方がいいかも。B級ながらもルーシー・リューやラッセル・クロウなど大物が出ているのもちょっとした見どころです。ルーシー・リューの殺陣さばきかっこよかったわー。

    マン・オブ・スティール

    B006HYN2SA
    マン・オブ・スティール ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [DVD]

    今年見た映画では一番満足度の低かったのが新スーパーマンことマン・オブ・スティール。ダークナイトの影響を受け過ぎというか、暗いヒーローはいいとしてもそこに説得力ないし共感もできず、人間を巻き込みすぎる大規模な戦闘シーンも全然ワクワク感がない。スーパーマンはどうこうという定義以前にスーパーマンの名前じゃない作品でも評価は変わらなそうです。

    今年はあとR100と劇場版まどかマギカも見ていますがそのエントリーはまた改めて。