映画「バクマン。」見てきた(ネタバレあり)

※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

原作は連載スタートから「これは面白い!」と注目、コミックも全巻取り揃えている大好きなコミックの映画化ということで。主人公2人のキャストも当初は「逆じゃね?」と思ってはいたものの、その後の予告や映画情報などを見るうちに「あ、むしろこっちでいいんだろうな」と納得してはいたものの、人気コミックの映画化は当たり外れ多いので過度の期待することなく当日を迎えました。

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原作がある作品は「原作と違う!」と憤る人も多いけど個人的には原作と違っていてもその映画の中で筋が通っていたら納得するタイプ。たとえばデスノートなんかは最後の対決も原作から大幅に変えてきたけど、ちゃんと筋が通っていた上にニア・メロまでもつれ込むことなくLと月で決着つけられたという流れはとてもよかった。

そういう意味でいうとバクマン。は正直消化不良というか、原作のいいところをあまり落とし込めずに、なんとなく原作を映画にしましたというよくあるパターンだったかなという印象。以下は感想をキャラクターごとに。

サイコー

木訥だけど熱血すると突っ走るキャラは佐藤健でよかった。緻密にシナリオをこねくり回すキャラとしては神木くんのほうが印象あってるので。キャラ的にはそんな不満はないんだけど、サイコーが倒れる瞬間初めてシュージンが「サイコー!」と呼ぶのは唐突すぎるかな。原作知ってる人はいいけど、映画の中では一度も「サイコー」なんて呼ばれることがなかったので、どこかでもうちょっと「サイコー」とか「シュージン」とやりあうところは欲しかった。

シュージン

キャラ設定の不満で言うと一番かも。原作では勢いでコンビを組むとは言ってしまうものの、サイコーはシュージンの能力を疑っていて、2人で話しをしたりやり取りする中でシュージンの能力を認めるからちゃんとコンビを組むことになる。原作通りにしろという気は無いけど、映画だと突然「コンビ組もうぜ!」と言ってきただけで、あとは亜豆との衝撃のやり取りで約束しちゃったから仕方なくという感じで、2人の信頼感が前半で感じられず腑に落ちないままマンガだけができあがっていく。後半でシュージンが新しい原作のネームを考えついた辺りでやっとサイコーが「すごいな!」という評価をするんだけど、そういうのをコンビ組む前、せめても最初の作品創っている間に欲しかった。原作だと最初に「学年成績トップの高木」というくだりがあるんだけど、そういう説明も無くただたんにクラスメートとして登場したってのもあるかも。

亜豆

小畑先生のイラストを活かすために似た人を選んできたんだな、と思ったけど、痛烈なまでに声がだめ。初めての声優役として登場したときの声が全然しっかりしてない棒読みで「声優目指してるレベルじゃないだろ」と冷めてしまった。2人の出会いをアレンジして、普通の高校生に仕上げたり、マンガの台詞を読み上げたりというのはよかったんだけど、声優を目指しているというキャラにリアリティ感じられない声だったのが残念。

エイジ

猟奇的な感じがしっかりでてていい感じだった。原作ほど天然ではないけれどそれは映画なりのアレンジの範囲内だし、対決ものっぽく仕上げるのにああいうキャラになるのはありかな。

福田

ヤンキー的なキャラとしてはばっちり。兄貴分っぽいところもしっかり出てるし。

中井

青木さんをなかったことにして中井さんのみにしたのはわかりやすくて英断だったと思う。同じ理由でカヤが登場しなかったのもわかりやすかった。

平丸

これも納得できないキャラ設定。当初は原作通りお金や楽することしか考えないキャラ設定なのに、なぜ主人公たちを助けるのか。繰り返しながら原作と違うのは全然ありだし、正義キャラに目覚めるでもいいのですが、それならそういう背景をどこかに描いて欲しかったし、もしくは福田あたりに合コン紹介するからと言われてがんばった、みたいな設定が欲しかった。「後で手伝ってもらえるから」というのは結局労力を割いている時点で、楽してお金儲けしたいキャラとは全然合わないし。

服部

2人を助けるスーパー参謀みたいなキャラが全然なくなってしまって、あんまり才能も見受けられない情熱だけある若者っぽいのは原作ファンとしては残念。本作のコンセプトが「友情・努力・勝利」なんだけど、ちょっとそのフレーズがうるさすぎた感もある。

佐々木編集長

リリー・フランキーというのはあざといかなと思いつつ、役どころとしては普通かな。

川口たろう

最高の一言。よくあの人をキャストに選んだなというか、あの映画の主人公はもう川口たろうだろと思わせるほどの存在感だった。

キャラ設定が微妙というもありつつ、全体的に原作の良さが出せてないなというのが見終わった感想。どうやったら連載できるのか、アンケートの順位を上げるには、高校生でも連載できるよう前もって連載を貯めておこう、みたいなバクマン。ならではの計画性、作戦みたいなものがちっとも出てこない熱血マンガになっていて、これ別にマンガじゃなくても成り立つだろうなというお話にしあがってしまったなと。とはいえこれだけの内容を2時間に収める方が難しくて、マンガ家デビューまでで前編、デビューしてからエイジと真剣勝負する後編、だったらもうちょっとバランスよかったのかもしれない。

連載作品に「この世は金と知恵」を選んだのは、邪道の王道ではなく邪道だけで進むと割り切った点ではありかな。ただ、学生生活からヒントを得るならPCPのほうがしっくり来たかなとは思うけど。

最後のスタッフロールは凝り過ぎなくらい凝ってたんだけど、本編がいまいちだっただけにスタッフロールが懲りすぎているのが落差を感じた。作ってる方は楽しかっただろうなあれ。

別にバクマン。である必要はない映画だったけど川口たろうだけは神がかってすばらしい、というのが最終的な感想ですはい。


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