話題の「カメラを止めるな!」見てきました。ネタバレ禁止系の映画は早く見にいっておかないといつネタバレされるかもわからないし、見た人の感想も楽しめないしね。
映画のタイトルとポスター画像、「前半は退屈だけど後半その評価がひっくり返る」という前情報のほか、相当に高い周囲の評判を踏まえての視聴でしたが、その高いハードルを超えて面白かった。伏線回収も見事だし、序盤の退屈さが最後にすべて面白さにつながる構成もすばらしい。この感じがあるうちにもう1回ちゃんと最初から見たくなる。ゾンビ映画ということで敬遠している人もいるみたいだけど、そこまで恐い作りにはなってはいないのでがんばって見にいって欲しい。
と、非常に面白い作品である一方、見終わった後に「やばいぞおもしろいぞなんだこの作品は!!!!!」みたいな強烈な感情には襲われなかったなーというのが正直なところ。「あーおもしろかった!」というテンションが近いかな。
面白さの感情は人によって異なるのですが、どうして自分の中でそこまで行かなかったかというと、伏線の回収がよくできているがゆえにナゾトキ要素が強かったというか、後半の流れが答え合わせに近くて、面白いけど「あーなるほど!」という感想で着地したのがその要因かもしれない。
見た人の感想を聞いてみると、ほとんどの人が「あそこはああいう仕掛けだったのか!」という伏線の驚きなことが多くて、感想言い合っても正解を確認しあっているだけ、みたいになることが多かった。もちろん親子愛とか仕事にチームで挑む情熱、みたいな要素もあるんだけれど、全体的には映画を見た人の感想が「そういう意味だったのか!」という画一的な感想になりがちな映画だったなとも思う。
とはいえ映画としてはすごい面白かったので決して作品を否定しているわけではないのですが、自分の中で映画は感想ひとそれぞれ、それを人と共有して、感想が違っても同じでも面白い、みたいなところに楽しみを持つタイプなので、見た人の感想がほぼそろい踏みしてしまうところにちょっと物足りたさを感じてしまったのかもしれない。重ね重ね贅沢な話ですが。
そして作品の感想以上にこの映画でいろいろ考えてしまったのは映画の興行とマーケティングについて。たった2館から全国展開するまで話題になったこの作品ですが、毎回の舞台挨拶や有名人のSNSといった要素もあれど、一番大きかったのは秀逸な伏線回収による「ネタバレ禁止」要素だと思う。そしてクチコミで広がるにはここまで綿密なシナリオを作り込まないと広がらないのか、と思うと、面白い映画があってもそれが世に広まるのは大変なことだなあとしみじみ痛感しました。
エンディングのテロップ見ると、この映画もご多分に漏れずクラウドファンディングやってたのですが。
上田慎一郎監督による長編映画『カメラを止めるな!』(仮)への製作上映支援プロジェクト! – クラウドファンディングのMotionGallery
https://motion-gallery.net/projects/ueda-cinemaproject
プロジェクトの達成金額は150万円で、300万円で作った映画という予算からすると大きく見えるけど、リターンの内容を見るとほとんどのリターンで劇場鑑賞券が含まれているので原価も結構大きい。映画関係者だとこういう鑑賞券も安く入手できるのかもしれないけど、「この世界の片隅に」では一切鑑賞券をリターンしてなかったこと、クラウドファンディングで支援した映画ならそりゃ見にいくよね、ということを考えると、支援者が見に行くであろう分の売上が加算されなかったことに。
片渕須直監督による『この世界の片隅に』(原作:こうの史代)のアニメ映画化を応援 | クラウドファンディング – Makuake(マクアケ)
https://www.makuake.com/project/konosekai/
この映画の場合は大評判でブレイクしたので結果オーライなのですが、他の映画でクラウドファンディングした場合、こうやって鑑賞券をリターンしてたら結構厳しかったなあと。余談ながらクラウドファンディングの中でスタッフロールがかなり高めの金額設定になってるんだけど、この映画は人数が少ないからとはいえスタッフロールがシンプルなのも個人的には好感触で、そもそもあんまりスタッフロール長くしたくない、みたいな思いもあったのかな、と勝手に考えをめぐらせてみたり。
カメ止めは圧倒的な大成功事例なんだけど、そこまでいかないまでも面白い秀作はきっとまだまだ埋もれていて世の中届いていないんだろうなあとか、ついつい余計なことばかり考えてしまいました。
とはいえ面白い映画を発掘するほど映画に詳しいわけでもないので、クラウドファンディングで映画投資みたいな仕組みがあったらいいのにな。毎月数千円とか年にいくらとか払っておいて、集まったお金を使って面白そうな映画に投資するみたいな。各作品がプレゼンして、まとめて1位が総取りでもいいし、毎月支払ったお金の中からユーザーが振り分けてもいいし。それだけだとなかなかお金払わなそうだから、映画館とタイアップして月に1回だけ1100円で映画が見られるチケットをつけておく、とかね。
有名な俳優が出てなくてもこれだけ面白い映画が見られるというところにインディーズ作品の可能性を感じたけれど、その収益を得るためには話題を集めなければいけない。その話題性を集めるには作品そのものにクチコミ要素が必要、だけどすべての映画がそんなにクチコミ要素に適した作品ばかりじゃないのが難しい。
映画もテレビも最近は有名人の起用や有名作品の映像化ばかりで、正直あまり面白みを感じなくなっている中で、カメ止めのような面白い作品が産まれたことはとても嬉しいと同時に、こういう作品の良さが先にある映像作品が世に出る仕組みが欲しいなあ、と映画そのものとは違う感想を強く抱かされた作品でした。