紙に書いたら自動でデータになる魔法のノート「CamiApp S」を一足早く体験してきた

※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

コクヨが発表したデジタルノートの新製品「CamiApp S」、リリースに先駆けて開催されたブロガー向け説明会に参加してきました。

デジタルノート「CamiApp S」を発売|プレスリリース|コクヨ
http://www.kokuyo.co.jp/com/press/2014/08/1596.html

コクヨといえば、ノートをスマートフォンで撮影するだけで簡単にデータとして取り込める「CamiApp」をすでに発売していますが、今回のCamiApp SはこれまでのCamiAppを一歩進め、「ノートを書くだけで自動的にデータとして取り込む」という、言葉だけを聞くとまるで魔法のような製品です。

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そんな魔法を実現するための仕組みが紙のノートをセットするカバー。このカバーに内蔵したセンサーが専用ペンの動きを認識し、書かれたデータをBluetoothで連携したスマートフォンへ転送する事で、写真撮影のような手間をかけずに書いたデータを自動でスマートフォンへ取り込む、という仕組みになっています。

設定としては専用のノートを両面テープでカバーへ固定したのち、カバー側のBluetoothボタンを長押ししてペアリング状態にし、スマートフォン側と接続するだけ。また、NFC搭載スマートフォンであれば、カバーのNFC部分にスマートフォンをかざすだけで設定することもできます。このあたりはスマートフォンでBluetooth使ったことある人ならさほど困らないかな。

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こちらが専用ペン。

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ノートとカバーはテープでくっつけるというアナログ仕様。

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後は専用ペンを使って普通にメモを取り、データとして送りたくなったら右下の「SAVE」にペンでチェックマークを入れるだけ。

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その後すぐにスマートフォン側の専用アプリ「CamiApp」へデータが転送されます。また、各種クラウドサービスとも連携しており、設定したクラウドサービスの番号を「SAVE」の横に数字で記入してから保存すると、スマートフォンに取り込んだデータをEvernoteなどのサービスへ自動でアップロードすることができます。

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実際にメモを取ってみたのが下記の例。

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右下の「SAVE」にチェックを入れるだけで自動的にデータが転送されました。OCRも対応しているのですが認識率は80%とのことで実用には難しいかな……。とはいえそこそこしっかり認識できてはいますね。

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面白いのが一度データを送ったページも再度データを送れること。例えば会議で議事録を取り、それをスマートフォンに転送した後で追加しなければいけない発言が会議で出た場合、その内容を同じページに追記し、一度チェックしたSAVEエリアを再度なぞるようにチェックすればいいだけ。
試しに上記のデータに一行追加、SAVEエリアに再度チェックを入れてみました。

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そうすると新しく追加した1行だけがデータとして転送。これ、要は1ページに何度繰り返し書いてもいいってことですな。ボールペンじゃなくシャーペンタイプだったら消しゴムで消してもう1回同じページに書くとかできるのかも。

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また、追加データは元のデータと合成することもできます。

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こちらが合成結果。何らかのリストをCamiApp Sでひたすらまとめていくという使い方もできそうです。

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仕組みとしてはペンの動きを認識しているのだから実際に書かれた文字や記号が関係ないというのは技術的に当たり前といえば当たり前なのではありますが、視覚的には一度書いてしまったチェックはもう使えないかのように思えてしまうだけに、アナログノートとデジタルノートの違いがなかなか面白いです。

事前説明会参加者には開発版のCamiApp Sが貸し出されたので実際に使ってみることができたのですが、これが見ると使うとでは大違い。説明会の話を聞いた限りでは「へー、それは便利そうだ」と思う程度だったのですが、自分が書いたメモが自動でデータになってスマートフォンへ取り込まれるという体験を実際に味わうとこれが本当に面白い。

以前の製品CamiAppも興味はあったものの、「わざわざスマートフォンで撮影するのは面倒で続かないだろうな」と思ってしまって購入にまでは至りませんでした。一方、このCamiApp Sならいつも通りメモを取るだけでいい。「撮影する」という1アクションをゼロにしてしまった点が非常に面白く、ネットウォッチャーで知られるotsuneさんの「n-clickを1-clickにすると商売になる。1-clickを0-clickにすると革命になる」を地でいく商品だなと思いました。

void GraphicWizardsLair( void ); // 「n-clickを1-clickにすると商売になる。1-clickを0-clickにすると革命になる」
http://www.otsune.com/diary/2008/09/11/1.html#200809111

一方、実際に使ってみたからこそ感じるいくつかの課題も。これは仕組み上仕方ないのですが、転送するデータは紙に書いた情報ではなく、ペンの動きに基づいてデータ化しています。そのため、本体の電源が入っていない時に入力した資料は、そもそもその動きをまったく追えていないのだから転送の対象外。これ最初気がつかずに書いたデータが転送されず涙目になりました……。このノート使う時はまず電源を入れ、ステータスランプがちゃんと光っていることを確認するという癖をつけておく必要がありそうです。

ちなみに、Bluetoothでペアリングしたスマートフォンの電源が入っていない場合は、ちゃんとスマートフォンの電源を入れたときにデータが自動で転送されました。毎回スマートフォンの電源やペアリングも確認するのだと相当大変ですが、とりあえずノートカバーの電源だけ入れればいい、ということであればこのあたりは運用で回避できるかな。

同様に動きを検知するため、イラストのように精度の高いデータは割とずれます。これはきっと書いている最中にノートが多少めくれたりすると、実際に書かれたデータとペンの動きがマッチしないんでしょうな。

こちらが実際に書いた絵。

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こちらは途中の過程。わかりにくいのですが目のあたりの丸が若干ずれてます。

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とはいえこのノートが目的としているのはテキスト主体だと思われるのでさほど支障はなさそう。また、紙がずれにくいノートパッド型だとより精度高く書けるかもしれません。

と、このあたりは運用で回避できそうな部分ではあるのですが、いざ購入を検討してみて気になったのがこの本体サイズ。カバーにセンサーが搭載されていることもあってかなり大きく、ノートをセットした時のサイズはiPadケースよりも更に大きい。重さはさほどではないものの、この大きさが鞄の中を占領してしまうのはちょっと厳しいです。魔法のような仕組みであってもできることはノートでしかなく、それがiPad以上のサイズ感というのは、ただでさえ混迷を極めまくっているうちの鞄の中の容積争いで勝ち抜くにはちと難しいかなあ。

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そして最大の課題は価格設定で、両開きできるノートタイプは約2万円、縦に開くメモパッドタイプが約1万6000円。

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技術的にはそれ相応の価格なのですが、7インチのAndroidタブレットくらいなら余裕で買えてしまいそうなこのお値段に対して、「ノートを自動でデータ化してくれる」という機能が購入者にとって納得のいく価格帯であるかどうかがポイントでしょうか。ノートを愛用しまくっている人にとっては「安い!」と感じられるかもしれないし、一方でノートを普段から使わない自分にとっては「面白いけど高いな……」というのが正直な感想でした。

ここからは多少長めの余談になりますが、このラインアップの充実っぷりは逆に「おもてなし」が行き届きすぎていて、もう少し割り切ってもよかったんじゃないかなと思わないでもない。AndroidとiOS対応のためにハードが2種類あり、それぞれがノート型とメモパッド型を用意しているので合計4種類。AndroidとiOSの違いはBluetooth 4.0とBluetooth 2.1という仕様の違いなのでそれぞれ別のBluetoothモジュールを調達しなければいけないし、Android版はNFCにも対応している。さらにiOSとAndroidそれぞれにアプリを開発しなければいけないので開発コストも……とかいろいろ考えると、万人受けするためにおおがかりになっている感があります。

この「おもてなし」感で好対照だったなと思うのが、同時に発表されたabrAsusとのコラボバッグ「たためる打合せバッグ」。

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こちらはひらくPCバッグやとれるカメラバッグをプロデュースしているいしたにさんと、ブログ「ネタフル」のコグレさんがコラボレーションし、社内の打合せに特化したバッグだそうです。

[N] コクヨがデジタルノート「CamiApp S」発表 → abrAsusとのコラボ商品”たためる打合せバッグ”と”ブックマークホルダー”のデザインに協力しました!
http://netafull.net/gadget/047892.html

社内の打合せに特化しているのでチャックはなく、外出中に使うのは難しい割り切り。でもそこを割り切っているからこそ社内移動で使いやすい仕組みがあれこれ詰まってる。そもそもが社内で移動の多い人に向けた社内専用バッグという割り切りの良さで、ターゲットとなる人はある程度絞り込まれるものの、だからこそターゲットにあう人には非常に気になる商品。こういうターゲット設定力の高さはさすがだなあと改めて思いました。

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このCamiApp Sも非常に斬新かつ意欲的な商品なだけに、この製品を面白がる人はきっといっぱいいるので、そういう人たちに手にとってもらうためにもうちょっと機能を絞り込んで少しでも低価格化しつつ、そういう人たちが喜ぶ機能に特化できたらよかったんじゃなかろうか。勝手な判断ですがこういう製品を好みそうな人はiOS使いな感あるので、ファーストモデルはiOSのみ対応かつメモパッド型にしてラインアップ絞り込み、調達も一本化して生産台数まとめることで少しでも低価格化を追求するとかね。個人的な感覚として両モデルとも販売予想価格であと数千円くらい下がっているとだいぶ印象違ったかなあと思います。

そういう意味では、こういう意欲的な製品こそクラウドファンディングの相性がよさそう。まずはコンセプトと試作だけ発表し、あとはユーザーの反応でiOSだけでいいかAndroidもサポートするか、ノート型がいいかメモパッド型がいいかを絞り込んでいくとか。クラウドファンディングというとお金を集める資金調達の面ばかりが強調されますが、ユーザーが自腹を切ってでも欲しいかどうかを教えてくれるマーケティングツールとしても実に有効なので、注目を集められる大手メーカーこそクラウドファンディングに挑戦してみて欲しいです。

このCamiApp Sの説明や仕様を聞いていて個人的に欲しいなあと思ったのはノートではなく付箋タイプの製品。前述の通りこの製品は電源入れてないと意味がないのだけれど、常にUSBで給電する仕様にしてしまえば電源オフにする必要もない。その代わりモバイル性がなくなるからモバイル性がそもそも必要のない付箋にしてしまい、机の上に常に置いておく仕組みにしておく。そうするとバッテリーも不要になるので更に価格帯下げられるというメリットも。

普段オフィスで付箋使っていて困るのが、付箋ってデータが残らないんですよね。不在時の電話を伝えるメモなんかは相手に渡しちゃうし、自分用のメモであっても使い終わったらそのまま捨てちゃう。でもCamiApp Sの仕組みを使ったらすばやくメモが取れるアナログの良さに加え、使い終わった付箋を捨てても記入日時やデータの内容は把握できるので「あのとき電話あった人だれだっけ?」とか後から調べることもできる。今までは付箋に書いても残らないから、とあまり書かなかった内容もこれならむしろ積極的に付箋に書こう! なんてことになるかも。

と、最後は若干偏った妄想になりましたが、そんな妄想をかき立てられるくらい面白い製品でした。説明会は事前に製品の内容を知らされていなかったのですが、値段を知ってだいぶテンションは下がったものの、製品のコンセプトを聞いたタイミングは多いにガジェット欲をかき立てられ、「これはちょっと欲しいぞ……」と思ったのも正直な感想です。

このあたりはきっと普段からどれだけ紙を使っているかにもよるところなので、自分のようなあまり紙を使わない人より、普段から紙をいっぱい使っているけどデータの扱いに悩んでいた、っていう人ならこの値段は気にならないかもしれません。

とにかく体験としては非常に面白い製品なので、こういう製品を待ち望んでいた人はぜひお買い求めいただきつつ、この仕組みを活かした製品を今後いろいろと展開して欲しいなと思います。

CamiApp S <キャミアップ エス> – コクヨS&T
http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/camiapp-s/


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