甘みと酸味が特徴的な日本酒「仙禽」の蔵見学で仙禽の秘密とおいしさを体験してきた

※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

まさに値千金なツアーでした。

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先日2周年記念パーティーにも参加した朧酒店で募集していた仙禽ツアー。仙禽はよく飲むけど1つの銘柄に特化して飲んだことはなかったことに加え、蔵をしっかり見学に行けるいい機会ということで参加することに。

 【仙禽蔵見学ツアー満員御礼!】2016年4月9日(土) ※ショップは臨時休業となります。
http://www.oborosaketen.com/theme486.html

集合場所は朧酒店のある新橋駅前のSL広場。

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専用バスに乗っていざ出発!

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座席に座ると旅のパンフレットに名札が準備されていて至れり尽くせり。

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なんと中には仙禽へお礼を書くことができるハガキまで……! 切手も貼ってあるからあとは書いて投函するだけという、隅々まで配慮の行き届いた準備にツアーへの期待が高まります。

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ツアー参加者の自己紹介が終わり、SA休憩が終わって配布されたお弁当をいただきます。道中は休憩を挟んでバスで2時間半くらい。

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そして見えてきた「せんきん」の文字。

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そして到着! ブランドは仙禽だけど蔵の名前はひらがな表記なのですね。

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蔵にはなぜかバスケットゴールの姿も。

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今回蔵の中を案内してくれた蔵元の薄井一樹さん。この方の説明が大変にうまく、詳しいのにわかりやすくて大変にためになりました。何度も蔵見学を案内しているからとはいえ、話の筋道のつけ方、たとえのわかりやすさが絶妙。

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蔵の中は清潔にしなければいけないので靴はカバー、手はアルコールで殺菌してから入ります。

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見学自体は場所の都合上、仕込みの順番とは関係なく回ったのですが、このブログでは日本酒の造り方に従い 順番を入れ替えました。お酒で使うお米を精米した直後から仙禽ができるまでの行程で並べています。

一番最初に行なうのが洗米作業。日本酒に使うお米を10kgずつに分け、秒単位で図って水を吸わせます。

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吸わせる時間はお米によっても精米度合いによっても違うけれど水温は常に6度。ただ、気温などの要因で常に水を6度に保つのは難しく、あらかじめくみ上げて2度にキープしたお水と当日の水をブレンドしながら6度の水を作り出すんだそうです。水を吸わせるだけでこれだけの手間暇をかけているのか……。

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水を吸わせた後はお米をふかします。食べるご飯と違って炊く、ではなくふかす、なのが面白い。

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ふかしたお米は麹室(こうじむろ)に運び、2日間かけて麹を作ります。

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なぜ麹を作るのかと言えば、お米のままではお酒にならないから。すべてのお酒は酵母菌が糖分を食べることで生まれるため、原料には糖分が必要。ワインの場合は葡萄がもともと糖分を持っているので、すりつぶした葡萄に酵母菌を混ぜ合わせることでワインができる。これを単発酵といい、最もシンプルな発酵方法だそうです。

一方、日本酒の原料であるお米そのものは糖分を持っていないもののデンプンを含んでいるので、このデンプンを糖分に変えてあげる必要がある。そのデンプン を糖分に変える役割を果たすのがこの麹室で作る麹であり、ワインの単発酵に比べて日本酒は非常に複雑なな並行複発酵という手法で作られるのです。

並行複発酵 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%A6%E8%A1%8C%E8%A4%87%E7%99%BA%E9%85%B5

さらに仙禽がこだわっているのが日本酒の「ドメーヌ化」。ドメーヌとはワイン造りで使われる用語で、栽培からすべてを自分達で行なう手法とのこと。日本酒では原料の酒米を別の地方から取り寄せることも多いのですが、仙禽ではドメーヌにこだわり、米は仙禽のある栃木県さくら市で栽培できる雄町、山田錦、亀の尾の3種類、水も鬼怒川の伏流水を田んぼはもちろん仕込み水としても使っているそうです。

こちらが麹室の中。発酵させるために部屋自体は非常に暑くなっており、立っているだけで汗がじわじわでてきます。

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朝9時にふかしたお米を麹室に運び、「種麹」を振りかけた状態で2日間かけて麹を作ります。こちらはその日の朝にふかしたお米で、種麹を振りかけてから実際には3時間くらい経った状態。見た目はほぼほぼ普通のお米です。

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1日経ったら温度を自動で管理してくれる隣の麹室へ移動。

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こちらは2種類のお米があり、右側は生酛用として8割磨いた亀の尾。

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1日経ったことでだいぶお米っぽさが無くなって見えます。

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右側の亀の尾は8割磨きなので5割磨きに比べて色はちょっと黄色めなのが違い。

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続いての工程は酒母室(しゅぼしつ)もしくは酛場(もとば)と呼ばれる部屋。麹室によって米のデンプンが糖分に変わったことで日本酒を造る準備はでき、これに酵母を加えると糖分がアルコールに変わります。この酵母を日本酒造りのためにより強く育てるための場所がこの酒母室。酵母は非常に弱く、他の微生物と一緒にすると淘汰されてしまうのですが、一方で本来は殺菌に使われる酸性に強いという特徴があるため、タンクの中を酸性にすることで他の微生物を淘汰しつつ酵母だけを育てることができるようになるそうです。

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酒母のレシピは先ほど作った麹に水、蒸し米、酵母、そして最後に乳酸または乳酸菌。酵母は大きく速醸系酵母と生酛系(きもとけい)酵母の2種類があり、乳酸を使うと速醸系、乳酸菌を使うと生酛系になります。2つの違いは乳酸の場合液体を入れるだけ、乳酸菌の場合は微生物である菌を使うためより難易度が高いのだとか。酒母ができるまで時間も大きく違い、速醸系は10日くらいなのに対し、生酛系は30日と3倍近くかかります。また、酒母を作る時に酵母も添加せず、蔵の中に存在する「蔵付き酵母」を使う場合は麹と蒸し米と水だけで酒母を作ることができ、この場合は55日近くかかるとのこと。

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そこまで時間もかかり大変な生酛系を作る理由は「唯一無二」の日本酒が造れるから。特に蔵付き酵母を使う場合はまさにその蔵でしか存在しないため、他の蔵では作らない個性的な日本酒が造れるのだそうで、この木の桶で作っているのがまさに蔵付き酵母を使って仕込んでいる日本酒です。

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仙禽で使っている3種類の酒米についても教えてもらいました。3つのうち山田錦と雄町は酒造好適米と呼ばれるお酒造りに適したお米。仙禽で使っている鬼怒川の水は超軟水で発酵力が弱く、パワフルなお酒には元々適していない。とはいえ水に合わせすぎてしまうと今度はシンプルなお酒になってしまう。具体的には五百万石や美山錦を使うとそうなりやすいらしく、雄町や山田錦を使うことで仙禽の特徴である「甘みと酸味」を実現しているのだそうです。

残る亀の尾は酒造好適米が存在しない時代の古代米と呼ばれるジャンルのお米で、とにかく使うのが難しいとのこと。なぜそれでも使うのかというのは、仙禽が普通酒からスタートした際、日本酒造りの主流だった山田錦を使わず亀の尾を使うことで目を引くための作戦。今も使っているのは意地もあるけれど、愛着もあるし、日本酒の歴史に対するオマージュとしてこれからも使っていきたい、とのことでした。

酒母ができたらいよいよもろみ造り。酒母、麹、蒸米、水を入れて発酵させていきます。

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実際にタンクを開けてもろみを見せてもらいました。

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もろみの表面はぷつぷつと常に泡が吹いていて、発酵が進んでいるのが一目瞭然。ほんとに微生物が日本酒を造っているのだなあ、と改めて感動します。

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もろみが熟成したらこれを搾っていよいよ日本酒に。搾る方法はいくつかあって、一番多いのは「ヤブタ」と呼ばれるは自動圧搾機での搾り。ヤブタってのは藪田産業が作っている機械だから、ということみたいですね。

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そのほか数は少ないですが、もろみを酒袋に入れて敷き詰めることで搾る槽(ふね)搾り、酒袋を吊して自然に落ちるのを待つ袋吊りといった手法があります。

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袋吊りのタンクがこちら。前に河忠酒造で体験したなー。

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搾った酒を瓶に入れれば日本酒の完成! 仙禽ではアルコール度を低めに作っているので加水する必要はなく、すべてのお酒が無濾過で濾過作業もないため、その後に火入れするかしないかの違いはあれど、搾ったお酒はそのまま瓶詰めしてしまいます。

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火入れは65度で10分間。それ以上長いと酒がだめになってしまうし短くても火入れの意味がない、絶妙のバランスだそうです。

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日本酒造りを学んだ後はいよいよ試飲タイム! 5種類のカップのうち、2つだけまったく同じお酒が入っているというのを選ぶゲームだったのですが、41人の参加者で当てたのはたったの3人。もちろん自分は大撃沈で、自分の中で「これだけは絶対に違う」と思っていたお酒が見事に他と同じお酒だったという悲しい結末でした。利き酒、ちょっと真剣に練習してみようかな……。

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蔵を案内していただいた一樹さんのほか、弟の真人さん(左)、中央が杜氏の小林昭彦さん。試飲から宴会までの間、参加者からの記念撮影の要望に快く応じていただけました。

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見学が終ったら蔵からバスで「志生亭」へ移動し、お待ちかねの宴会タイム!

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志生亭
http://sikitei-sakura.com/

志生亭の目の前は一面の菜の花畑。のどかでいい雰囲気です。

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宴会は仙禽見学にふさわしく仙禽ロゴ入りのグラスで仙禽をいただきます!

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一樹さんの挨拶から宴会がスタート! 全部で8種類の仙禽がいただけるとのことで嫌が応にも期待が高まります。

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クラシック仙禽、亀の尾と雄町。ほんとはシルバーな山田錦もあったんだけど写真撮り損ねた……。

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仙禽の文字が鳥を表しているモダン仙禽は雄町と山田錦。

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乾杯では、モダンともクラシックとも違う新作という「仙禽一聲(せんきんいっせい)」というお酒もいただきました。

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「鶴の一声」という意味だそうで、甘み酸味が特徴の仙禽ながらその甘み酸味が控えめで飲みやすい仕上がり。4月にはお店に並ぶとのことでこれは楽しみ!

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こちらは「仙禽鶴亀」。

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精米歩合は磨きに磨いてなんと19%!そのおかげかとても甘く飲みやすい上品な味でした。

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最後の最後にはラベルもされていない「ナチュール」というお酒。

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調べてみるとこれが酵母無添加の生酛で作った逸品のよう。そうか、あの木の桶で仕込んでいたのがこのお酒なのか!

連載:あおい有紀の〈気になる日本酒〉 vol.22「仙禽 ナチュール(酵母無添加きもと)」 | PREMIUM JAPAN – Part 2
http://www.premium-j.jp/eat_drink/18668/2/

惜しむらくはこれが出ることには結構酔っ払ってしまっていたこと……。ちゃんとどんな味かしっかりメモっておくべきでした……。

お酒ばっかり書いてますがご飯もとてもおいしいお店でした。日本酒はやっぱりご飯にあわせてこそ派なので、たくさんの仙禽と美味しいご飯をいただけたのは至福の時でした。

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宴会の後半は仙禽に対するクイズ大会。クイズ大会は参加者を3チームに分けた上で、利き酒を当てた人がいるチームはその分だけポイントをもらえる仕組みだったんだけど、残念ながら我が青チームは利き酒正解者ゼロ。しかもクイズは挙手で回答する仕組みのため、縦長の部屋で後ろの方に陣取っていた青チームはここでも不利となりじわじわと点差が開く始末。これはどげんかせんといかんねと思いつつ、クイズの出題を全部読み終わる前に回答を当てる作戦を発動、なんとか2回正解して最終問題で全チーム横並びまで持ち込んだものの、最後の最後で敗れ去りました。まあ、やるだけのことはやったから悔いはないかな……。

クイズ読み終わる前に回答して2問正解したことで一樹さんには「今日のMVP!」とお褒めの言葉いただきましたが、蔵見学の説明が大変わかりやすく詳しかったので覚えやすかったことに加え、出題の傾向が心優しくつかみやすかったというのも理由ですかね。あれがもっと「ですが」を多用するいじわる系だったらとても正解できてなかった気がする。

楽しい宴会時間も終わり、あとは東京まで帰るだけ……、という時間も残った仙禽で酒タイム! すでにいい気分で寝ている人も多い中、宴会で余った仙禽をたらふくいただき、ほんとに仙禽無双な1日でした。

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本格的な蔵見学は初めてだったのですが、すごく説明が上手で細々と教えてもらえて、なんとなく頭で理解していた酒造りの一連をとても身近に感じることができました。もっと人数が少ない見学だと麹造りなども参加できるとのことで、ぜひまた機会を改めて参加してみたいものです。たくさんの仙禽を飲むことで仙禽にも詳しくなれて大満足のツアーでした。新作の発売が今から楽しみ。仙禽一聲は迷うことなくゲットしたいと思います。


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