Switchリメイクの「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女」クリアした


ファミコン時代、正確にはディスクシステム時代に発売されたアドベンチャーゲームの名作がSwitchでリメイク。楽しみにしていたので発売日に購入してサクッとクリアしました。

ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女 | Nintendo Switch | 任天堂
https://www.nintendo.co.jp/switch/aw3ca/

アドベンチャー好きを自称する自分の中でも3本指に入るほど大好きな作品がまさかのSwitchでリメイク。「ファミコン」なんて名前が入った作品がSwitchでリメイクされる日が来るとは思わないよね……。しかも2部作の両方まとめてとかファンとしては感涙ものです。

今作はディスクシステムで発売された2タイトルをグラフィックとBGMを強化しつつゲームシステムは忠実にリメイク。なのであの頃のアドベンチャーになれてない人にはちょっと古くさく感じてしまうかもしれませんが、シナリオがとてもよくできている作品なので、アドベンチャーにシナリオを求めるタイプならおすすめ。とくに2作品のうち「うしろに立つ少女」のできは本当に素晴らしいので、未体験の人はぜひプレイしてほしいです。

リメイクについては絵はきれいになっていて見やすいし、サブキャラもちゃんとグラフィックが用意されていて力が入っている。一方でBGMは個人的にはいまいちというか、ファミコン版のピコピコ音なのになぜか怖い……、みたいな雰囲気がかなりなくなってさらりとした音楽になっちゃってるのがファンとしてはさみしい。これ単なる思い出補正とかではなく、純粋にゲーム音楽としてファミコン音源のほうが上だと思うんだよな……。幸いにして本作では音源をファミコン版やスーパーファミコン版に変更できる機能が用意されているので、ちょこちょこと音楽を入れ替えながら遊んでいました。

後気になったのはレスポンスの遅さで、ボタン押してからの反応がワンテンポ遅く、正しくボタンを押しているのにカーソルが動かなくて、1つ下の質問をしたいのにまた同じ質問繰り返す……、みたいなことがよくあった。それほどスペック必要なタイトルでもないだろうし、なんであんなにレスポンス悪いんだろうか。個人的にはJoy-Conの右側だけを片手持ちすると片手で全部操作できるし、ボタンと十字キーを同じ指で操作するためにレスポンスの悪さが気になりにくくなるのでおすすめです。

以下はリメイク版をクリアしての率直な感想。ファミコン版だけでなくSwitch版についての感想もあるのでご注意ください。

クリックするとネタバレを表示・非表示します

※【注意】RSSリーダーで読んでいる人へ

仕様上フィードでは選択制にしたネタバレがそのまま読めてしまうため、RSSリーダーで読んでいてネタバレみたくない、という方はこちらでページを閉じるようお願いいたします。

まずは「消えた後継者」から。2作品のうち「うしろに立つ少女」のほうが好きだというのはずっと記憶にあったんだけど、プレイしてみてその理由が改めてよくわかった。シンプルにうしろに立つ少女に比べると設定やストーリーが弱い。最初に出てきた天地が実は神田だった、というのは面白い設定なんだけど、天地こと神田の犯罪がザルすぎて、これどう考えても警察にマークされて終わるだとしか思えないところに感情移入ができないのが1つ。

人を殺す姿を散々見られていて、それがたまたま綾城家のたたりと思ってくれたからよかったものの、殺害現場見られている時点でいろいろ隙だらけ。会社の要人が亡くなることで自分のポジションが高まる、というのも会社内でバレバレだし、顔をひっかかれた傷があるからもうDNA鑑定で一発だよな、とか諸々。そもそも神田はなぜ主人公が記憶を助けてその後ずっとそばにいたのか、目が覚めた突起に他人だと振る舞ったのか。あそこで「記憶がなくなっている」というのが確定してない限り、タイミングよく偽名は名乗れないよな……。

というところにしっくりこないところはありつつ、実は主人公こそが後継者だったという展開や、キクの墓を暴いたらそこにいたのはキクじゃなかった、という裏切りのシナリオはとてもよくできているし、最初の記憶を失う展開からつい引き込まれる導入のうまさもすばらしい。あくまで「うしろに立つ少女」と比較してしまうと落ちるかな、というだけなので、十分に良作ではあります。5時間でポンポン人が死んでいくのもストーリーとしてはテンポよく進むのでいい。

もう1つの「うしろに立つ少女」は、改めてプレイしてみるとミスディレクションのうまさが光る。しのぶが隠されている鏡はあきらかに怪しいし、あのシーンで洋子が「あなたのうしろにいるかもしれない」と言うのは「鏡の後ろ」と気がついてもおかしくないのに、その後にあゆみが「私の後ろに立っている洋子のこと」と間違った理解を説明することで意識をずらさせ、さらに旧校舎にいかにもわざとらしい壁があることで「しのぶはここに埋められているんだ!」と早めにミスディレクションさせられる。

日比野も金田事件のことを聞かれたときの狼狽っぷりなどあきらかに怪しい、だけどそれ以上に校長を怪しく見せる演出のせいで日比野が怪しそうだと言うことを言ったん忘れさせられてしまう。あと最後まで善人として描かれていた浦部だけど、結局しのぶを轢いたのは浦部なんだから、息子がかわいいとはいえ死体隠している時点で悪人だよな……。

そんな設定のうまさと、「うしろの少女」が次第に明かされていくまでのシナリオのうまさを改めて堪能しつつ、最後の最後でリメイクの残念さに憤ってしまった。これはもうネタバレ大前提なのでそのまま書きますが、実は日比野が犯人だ、と名乗るシーン、あそこ旧作ではいきなり日比野が振り向き、その後にメッセージが追従することで最高に怖い演出だったのに、今作はメッセージが先に表示されてから日比野が振り向く演出になっているので、先に文章で読めてしまうからせっかくの演出が怖くなくなってしまう。これ自分のメッセージスピードが速すぎるせいかなと思って3回くらいスピード変えてやったけど一緒だったし、さらには思い出補正かなと思って旧作も調べたけど、ファミコン版はもちろんスーパーファミコン版のリメイクもそこはきちんとしていた。

うしろに立つ少女最高のシーンで、このシーンこそがうしろに立つ少女の良さなのに、なぜこんな残念な演出にしてしまったのか。夜中にプレイしていて思わず声が出そうになるレベルで残念でした。あそこでメッセージを先に持ってきたことに何か理由はあるのか、だれかネタバレありインタビューで聞いてきてほしい。

作品の感想はここまでにして、以下は本筋に関係ない余談なのですが、本作の価格設定はいろいろ考えさせられる。どちらのタイトルも4,378円とそこそこいいお値段で、マリオシリーズなど任天堂の看板タイトルが6000円台なのに比べれば安価だけど、インディーズゲームとかに比べると結構お高めという中間的な価格設定です。

ただゲームソフト1本としてみれば価格としてそこそこリーズナブルなんですが、ゲームのプレイ時間自体はどちらも5時間くらいでクリアできてしまう。細かい遊び要素はあれど基本的には1本道でシナリオを楽しむゲームなので、金額を時間換算するコスパの考え方だとちょっと分が悪い。

それでもこの価格に設定したのは、そもそもこのゲームをプレイするのはファンだから金額はさほど関係ないと思ったのか、リメイクとはいえ新作丸々作るくらいの開発コストがかかっているから開発費をきちんと取りましょうということだったのか。最近はゲームクリアに数十時間かかるタイトルも多いので、そういうゲームになれている人からすると、4000円払って5時間で終わり、というのは物足りなく思えてしまうのかもしれない。

個人的にはあのファミコン探偵倶楽部をリメイクしてくれただけでこの値段はまったくもってリーズナブルなんだけど、実際の売上も含めてどういう結果になるのかは興味がある。コレクターズエディションとか見ていると完全に旧作のファン狙い撃ちだから、知っている人だけが買えばいいのか、評判からのクチコミ狙っているのか、そのあたりはどうなんだろう。

コレクターズエディションの位置づけもそれを思わせて、今回パッケージで買えるのはコレクターズエディションのみで、単体購入したい人はダウンロードのみなんですよね。これ、店頭で買う新規の顧客はほとんど意識してないように思える。なおAmazonのコレクターズエディションはすでにプレミアついて値段高くなっているのでご注意ください。

B08WWJ6Y86
ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女 COLLECTOR’S EDITION -Switch

一方で、プレイ時間が長ければいいのかという話もある。こないだ友達にファミコン探偵倶楽部のすばらしさを力説しつつ「でも5時間くらいで終わっちゃうけど4000円するんだよね」という話をしたら「え、5時間で終わるのむしろうれしい」と言われてはたと気がついた。確かにプレイ時間長ければゲームいいってもんでもないし、むしろ短い時間でさくっとクリアできるのがうれしいこともある。

先日までPS4のGhost of Tsushimaをちまちまプレイしていて、40時間くらいプレイしてやっとクリアした。プレイ自体は楽しかったんだけど正直「早く終わらないかな」という気持ちも強く、途中はかなり惰性でやっていたところもあったので、プレイ時間が短いからむしろうれしい、というのは、可処分所得時間の取り合いになりつつある現代にとって重要な考え方かもしれない。

なお、余談ながらGhost of Tsushimaは本来クリアまで40時間かかるようなゲームではなく、サブエピソードをひたすら潰してからメインシナリオ進めるとやってたらなんだかんだ40時間いってしまったので、本当のプレイ時間はもっと短いと思います。すぐ死んでしまうゲームだから育成目的でひたすらサブエピソード潰してたら、気がついたら40時間いってたのよね……。おかげでパリィはかなりうまくなったけど。

あと開発費という意味では、このタイトルでこれだけの金額で販売することを考えるなら、もうちょっと寄付みたいな開発形態が普及してほしいなとも思った。クラウドファンディングは多少根付きつつあるけど、あれって発売時期の縛りが面倒だし、お金もらったはいいけど開発できなかった、ってときに返すお金もないからハードルが高い。過去作のリメイク、開発に着手してくれるだけでうれしいからお金出すし、見返りはゲーム開発の進捗と待ち受け画面くらいで開発期間の縛りもなく、開発できなくても返金の必要はない、というような開発有利の寄付スタイルがもう少し根付くと個人的にはうれしいなあと思う次第。もしくは「発売したら絶対買う」という先行予約券とかでもいいのかもしれないけど。

と、余計なことを書きつつ、アドベンチャーゲームとしては非常におすすめの2作品。5時間くらいでサクッと終わるし、困ったらファミコン時代の攻略サイトとかでも十分機能するので、プレイしたことない人にはぜひ体験してほしい作品です。どっちからプレイしてもいいようになっているけど、どちらか1つをおすすめするならやはり「うしろに立つ少女」なので、本来はPartIIだけどまずはうしろに立つ少女から始めるのがいいかもしれません。

B08WWHSZZD
ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者|オンラインコード版

B08WWC21R5
ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女|オンラインコード版

いやー、この流れでふぁみこん昔話とタイムツイストもリメイクされないかなー。ただゲームシステム的にふぁみこん昔話の難易度は今だと相当手を入れないと厳しそうな気はするけど。

タイムツイストはすでにスーパーファミコン普及機に発売されたディスクシステムのタイトルなので知らない人も多いのですが、今までの作品とは一線を画する世界観と、最後の痛烈なオチが最高なので、これもリメイクしてほしい名作であります。ふぁみこん昔話はリメイクではないものの、新・鬼ヶ島はファミコンミニや3DSで発売されているのですが、ふぁみこん昔話の第2弾の「遊遊記」やタイムツイストはいまだとディスクシステム手に入れるくらいしかプレイする方法がないので……。


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください