単に「操作性が悪い」で切りすてるには惜しいくらい、1つのゲームとしてだけではなくいろいろと示唆に富んだお話だったのでちょっと考えをまとめ的にエントリー。
ちなみにスマホ版ドラクエも含めゲームを語るには「どこまでプレイしたか」が大事な要素ですが、ひとまずにじのしずくをゲットして竜王の城までの道を作り、あとはロトのつるぎゲットとレベル上げに専念するところまでたどり着きました。
スマートフォンでドラクエをIからVIIIまでリメイクするというプロジェクトの第1弾として無料でリリースされた初代ドラゴンクエストは、先着100万名まで無料でダウンロードできるという太っ腹企画によって多くの人が初日から無料で入手、あっという間に100万ダウンロードを達成するほどの好成績となりました。
ASCII.jp:スマホ版「ドラゴンクエスト」が1日で100万DL達成! 無料期間を延長
http://ascii.jp/elem/000/000/846/846564/
そうした大人気の一方というかむしろ大人気だったからこそとは思いますが、スマホ版のタッチ操作において「操作性が悪い」という評判がユーザーの間で噴出。通常、3Dになる前のドラクエシリーズは、十字ボタンを1つ押すと1マス分進む仕様なのに対し、スマホ版では仮想十字ボタンを1つ押すと半歩だけ進む仕様になっており、結果としてスタート地点でもらえる横3つ並んだ宝箱が半歩ずれて開けるのが難しいという現象が発生。このあたりで心折れて投げ出す人が自分のソーシャル周りも含めてネット上で散見されました。
ゲーム後半になっても確かにファミコンの十字ボタンに比べると操作性が上とは言いがたいものの、個人的にはなぜドラクエの常識である「1回押して1歩」を変えたのか、ということのほうがむしろ気になりつつ、この「半歩ずれ」を取り巻く世論や感想もいろいろと興味深いものがあります。以下、この件についての感想を項目別にてまとめていきます。
■なぜ「半歩」だったのか
これはあくまで仮説にすぎませんが、たぶん「1回押して1歩」だとさらに操作性悪くなるんじゃないかな。というのも物理ボタンは「右を押した後に下」と移動を別々に行なえますが、タッチ操作のスマホでは「右を押しながら指をスライドして徐々に下へ」という操作になるため、十字ボタンに触れている時間が長くなる。その結果思った以上に移動してしまい、それはそれで「操作性悪い」と言われていたのではないかと。
■本当に「半歩」は操作性が悪いのか
個人的には最初こそ半歩が気になったものの、ラダトーム城抜けてスライム倒しているうちにほとんど気にならなくなりました。前述の通り画面に指を押しつけながらスライド移動するやり方になれるとむしろ移動は快適だし、町の人も半歩ずれていても話かけられるし、進行方向に半歩分壁があってもそれは自動的に補正されてちゃんと前に進める。困るのは宝箱と階段くらいですが、そのときだけ微調整すればいい話なので、いったん操作に慣れればそこまで困ることはありませんでした。慣れると言っても5分そこらの話ですが。
なお、仮想十字ボタンは設定によって場所を移動でき、十字ボタンを画面中央に置くとかなりプレイしやすくなります。さらに片手では無く、一方の手で本体をホールド、もう一方の手で操作すると安定性も飛躍的に向上、スライドの簡単操作で思った通りに移動しやすくなります。
■なぜ仮想十字ボタンにしたのか
ネットを見ていると「ボタンではなく画面の触ったところに進めばいいのに」という感想も見られましたが、たぶんそれやるとロトのしるしが圧倒的に見つけにくくなるw 細かな調整するためにはやっぱり十字ボタンですよね。
また、十字ボタンだからこそドラクエ、という懐古的な楽しみ方も奪ってしまい、結果リメイクのよさも失われそう。個人的には「岩にぶつかっても音が鳴る」仕様だったり、「画面にキャラが多く表示されるとキャラが点滅しはじめる」とかは直しててもよさそうなもんだとおもいましたがw。それはさておき、開発の工数的にいちいち大幅に違う操作法にできなかったというのもありそうです。
■横画面でプレイしたかったという声
縦長だと違和感あるのかもしれませんが、そもそも高画素化されたスマートフォンでは、iPhoneですら横画面の状態でテレビ相当の解像度があり、むしろ縦に長い分表示領域は増えているんですよね。そういう意味では下の画面が広いという点で2画面の3DSを1画面にしして片手で操作しているようなもんでしょうか。個人的には縦だからこそ片手で操作できて嬉しいので、両手を必須とさせられる横画面じゃなくてよかった。また、両手が使える人は前述の通り片方の手を使って本体をホールドすると操作性は大幅アップです。
■難易度について
かなりヌルゲー化してた。レベル低いのに特攻して爆死したことはありつつも、丁寧にレベル上げてればそんなに困らないし、シナリオもちゃんと町の人に話しかけていればいくところは教えてくれる。むしろようせいのふえやロトのよろいのありかがマップ上で光って示されていて、「村人の話聞く必要ねえじゃねえかwww」という残念感があったほど。せめて光るならフラグ立ててからにしてほしかったなー。
■ゲームのレビューについて
あくまで身の回りですが、プレイし続けている人はほとんどの人が操作性気にせず楽しんでいるのですよね。ネット上も操作性で投げ出した人は見ている限り最初のラダトーム城くらいで力尽きている印象。ファミ通のクロスレビューはよく「全然プレイしてないくせに」と揶揄されますが、ゲームを評価するには一定の時間は必要なのだよねえと改めて思わされます。
■それでもファミコン版のほうが操作性はいいという意見
それはきっとファミコン版ドラクエどうこうということではなく、単に「物理ボタンって押しやすいよね」という話でしかないよなと。単純にファミコン版と比較したら、なぜ人と話すのに東西南北していせにゃならんのかという操作性の悪さのほうが圧倒的に目につく気がします。難易度も明らかに高くてスライムが強敵だしね……。まあそういう意味に比べるべきはファミコン版ではなく東西南北指定がなくなったゲームボーイカラー版、スーパーファミコン版、Wii版あたりなのかもしれませんが。
■無料だからこその賛否両論
5分くらいでプレイやめてしまうというのは、無料だったからこそなのかなあと。500円くらい出して買ってたらせめてもマイラくらいまではたどり着くまでやってたんじゃなかろうか。100万ダウンロードはとてもいいプロモーションでしたが、一方で無料だとあまりプレイしないままの感想が飛び交ってしまうというデメリットもあるのだなあとマーケティングの見地からも勉強になります。
まとめとしては、もちろん物理ボタンを使えるドラクエに比べると「操作性が上」とはいいがたいものの、スマホに適した作りにはなっているしちょっとプレイしたら全然違和感なく溶け込める。それでもこういう意見が散見されるのは、昔のファミコンへのいい思い出が美化されすぎてるんじゃないかなあとちょっと思いました。
たとえば操作があまりにも難しすぎるスペランカーなんかは、スマホ版ドラクエとは比べものにならない操作性の悪さでした。まあスペランカーなんてそれがまだゲーム性にもなってるからいいのですが、私のゲーム歴で最強最悪の操作性だった「レリクス 暗黒要塞」ディスクシステム版なんて、画面が切り替わるジャンプするごとにローディングするけど、切り替わる先が表示されないからジャンプで目的の位置に乗れず落ちてきてまたローディング、またジャンプしてローディングを繰り返すという、クリア直前まで行っても慣れることのない劣悪環境でした。結局ラスボス直前で諦めてしまったな……。
ファミコン版のドラクエはもちろんスペランカーなんかと違って操作性は悪くないのですが、ファミコン時代なんて操作性悪いゲームいくつもあって、それでも前向きに楽しんでいたのに対して、最初の数分で操作性悪くて諦めてしまうというのは、もう我々が夢中になってゲームをプレイしていた子供の心を忘れてしまったのかもしれません。「最近のゲームはゆとり仕様www」なんて言われるゲームも増えていますが、むしろそれは世代ではなく時代の問題で、ファミコンプレイしていた世代ですらもはや最後までさくさく進める親切設計でないとプレイしてくれないんだなあというのが、今回一番興味深かったポイントです。
重ね重ねですが十字ボタンのほうがもちろん操作性はいい。だけどスマホでドラクエを移植し、ファミコン時代の仕様を活かしつつも片手で操作しやすいスマホならではの操作性を実現する手段として、今回のタッチ操作は割といいデキだというのがにじのしずくゲットユーザーとしての現状の感想なので、ぜひラダトーム城で諦めてしまったユーザーの方も、マイラの村までがんばってたどりついてみてくださいませ。
【追記】
余談ですがクロノ・トリガーのiOSアプリはドラクエなんて目じゃねえよくらいでやばいと思う。さすがの自分でもこれはたぶん心折れるわ……。
iPhone版クロノトリガーで「死の山」がクリアできない人のための攻略法 – ならず者でいこう!
http://d.hatena.ne.jp/s_locarno/20111215/1323922214