自由だけど自由じゃないWii Musicインプレッション

※この記事は5年以上前に書かれたため、情報が古い可能性があります

Wii Musicにみる音楽の本当の楽しみ方と、逆転の発想を読んで。

 このWii Musicは、そういった採点の要素がほとんど無く、とにかく自由。

 ゲームの感想なんてものはとかく主観であって正解なんてないんだけど、個人的にWii Musicを体験して思ったのは、この「自由」という表現や任天堂のプロモーションこそがWii Musicの魅力に対して誤解を招いている気がするので個人的な思いの丈をこのエントリーでぶつけておく。

 なんだかんだ発売日買いしたWii Musicですが、正直ゲーム内容にはあまり期待してませんでした。RPGにしてもシナリオ重視な自分にとっては自由すぎる世界観というのは合わないと思ってたし、だけどWii Musicが作り出そうとしている新しい価値観みたいなものはひしひし感じていたので、宮本大先生が渾身の力を込めた作品がどんなもんなのか味わってみたい、という気持ちが強かったというのが正直なところ。

 で、実際に始めてみると、期待が低かったこともあるだろうけど、予想以上に楽しいというか、思っていたゲームとは全くちがうなと言うのを強く認識したのでした。

 CMなんかを見るとWii Musicは単に楽器を好き勝手に演奏できるゲームのように見えるし、実際にプロモーションもそうだとおもうんだけど、実際にやってみるとそこまで好き勝手なゲームでもない。いや、もちろんそういった好き勝手な演奏もできるんだけど、実際にはどのタイミングでリモコンを振ればいいかという音符が表示されたり、どういう演奏がいいかというレッスンモードも用意されている。

 このゲームを究極なまでにシンプル表現すると、「音階を自動で合わせてくれるリズムゲーム」というところ。単に音符のタイミングでリモコンを振れば音楽は作り出せる。採点もクリアもないけれどシステムはいわゆるリズムゲームでしかない。

 ただし、リモコン操作そのものが単なるリズムゲームではなくしているというのがまず1つ。例えばダンスダンスレボリューションというゲームが一時期一世を風靡したけど、あれって単に十字ボタンをタイミングよく押すだけのゲームを体で入力できることがゲームのおもしろさにつながっている。Wii Musicもそれと一緒で、リモコンというインターフェイスで入力することそのものが、新しいおもしろさにはなっているという一面はある。

 しかしこれ自体はWii Sportsを初めとするWiiゲームに共通するところであって、自由だどうだという話とはあまり関係がない前置き。自分が大きく違和感を感じたのはむしろレッスンモードにあります。

 レッスンモードでは6つのパートを1つ1つ練習していき、最後に6つのパートを重ね合わせることで1つのセッションを作り出す。レッスンも自由に演奏してもかまわないけど、基本的には表示された音符通りにタイミング合わせて音を出しましょうね、という、自由な印象のWii Musicとは思えないゲームモード。だけど実際にプレイしてみるとこれこそがWii Musicの真骨頂だなと実感しました。

 ここでまたたとえ話を持ち出すと、サッカーのルールを全く知らない人がサッカーボールとサッカー場で遊んでも、それは単なる玉けりであってサッカーではない。もちろん玉けりだけで楽しいのかもしれないけれど、それはサッカーを楽しんでいることにはならないと思う。

 音楽も同じことで、適当に音を鳴らすだけというのは音を楽しんではいるのかもしれないけれど、それは音楽ではないと思う。Wii Musicのレッスンモードはサッカーのドリブルやパス、センタリング、そしてシュートに至るような基本プレイときちんと教えてくれることで、音楽そのものの魅力を教えてくれる大事なイベントだと思いました。

 これは実際やってみると痛感するんだけど、6つのパートを全部自分でやってみると、1つ1つの音がすごく実感できて大事に思える。単に音楽を聴く側だった時は何の変哲もない音楽だったんだけど、レッスンを重ねて1つの曲を作ってみると、「ああ、ここでドラムが効果だしてるんだなあ」と気づかされたり、「ここでベースが音外してるなー」なんてことが音楽に対してド素人の自分でも理解できたりして、そんな自分に驚かされる。

 重ねて説明すると自分はシナリオ重視型で、単にキャラクターを育成するだけというようなやり込み系ゲームは苦手なんだけど、Wii Musicはレッスンを受けて自分でセッションを作り出せることがかなり楽しい。

 このゲームが賛否両論なのはまさにここにあるんだろうなと思っていて、自由という印象で入ってくると「なんだしょせんリズムゲーか」で終わってしまうんだけど、レッスンモードを重ねて音楽を自分で作り出す楽しみを知るとおもしろくなってくる。人間生活にも言えることだと思うけど、自分勝手にしていいのと自由であることというのは似ているようではき違えてはいかんと思うし、自由ではあっても自由を楽しめるまでにはきちんとしたレッスンが必要という意味で「自由に楽しめる」をあまりアピールしすぎるプロモーションはちょっとちがうかなと思いました。これは音楽というそのものを楽しむための入り口というほうが合ってる感じ。

 もちろん子供がリモコンを振って音を楽しむという遊び方もできるのがWii Musicではあると思うし、そのプレイそのものを否定する気もさらさらないですが、単に「自由」でくくってしまうにはとWii Musicの持つ音楽の入り口という要素が見えにくくなってもったいないと思った次第です。

 まあなんだ、なにがいいたいかって今年もWii Music Nightお願いしますということですはい。

“Wii Music” (任天堂)


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