毎年楽しみにしているマンガ大賞、今年は有休消化中で時間もあったので久々に発表会場へお邪魔してきました。
マンガ大賞との関わりは記念べき第1回を当時取材させてもらったのがきっかけ。しかしこれ、ブロードバンド関連媒体だってのに改めてブロードバンド全然関係ないな……。
マンガ好き有志による「マンガ大賞2008」が発表。第1回大賞は「岳」
https://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/21418.html
その後も授賞式にはちょこちょこ参加させていただいており、東村アキコ先生の「かくかくしかじか」が受賞したときはライブ配信のお手伝いもさせてもらったり。今回もライブ配信は実施されていましたが、もう充実した設備が揃っていてこりゃ全然出番ないですわ、くらいのクオリティでした。
会場には今回ノミネートの作品が熱いコメントとともに並べられ。これを見ながら「今回の大賞何かなー。王道ならこれかな、いやでも自分の推しはこれかなー」と待ち時間に妄想を膨らませながら楽しみます。
過去の大賞を受賞した作者さんの色紙も一堂に展示。どの作品も受賞がついこの前のようだけど、気がつけば12年も経っているんだな……。
授賞式には前回大賞だった「彼方のアストラ」の篠原先生が登場……! お忙しいところありがとうございます! と思ってたけど本人曰く「連載してなくて無職なんでいつでも来ます」というスタンスらしいw。
マンガ大賞を受賞してからこの1年の感想もいろいろと教えていただきました。やはり受賞の影響は大きく「マンガ大賞の影響力が年々増している気がする」とのこと。5巻で完結することもあり「打ち切られたのかな、と思われている節もあるけど、多くの人に拡散するきっかけになってうれしい」と若干自虐的な感想を披露していました。
彼方のアストラ自体は自分にとっても大好きなマンガで、5巻というコンパクトさもあって周りの知人にはオススメしまくってきたのですが、そういうクチコミ要素が強いのか「1年経っても2年経っても未だに初めて読んだ、という感想が続いている」とのこと。
そして期待の次作については「(スケットダンスの次の)2作目が大変だと思っていたから意欲作としてアストラを描き、マンガ大賞をもらって格好がついた、これで自由に描けるぞ、と思っていたら3作目も大変。戦う相手が過去の相手なんだという当たり前のことに気がついた」との苦労話を披露しつつ、「期待に応えようと思って身動きがとれなくなっている。いったん僕の存在は忘れて期待を大きくしないようにしてもらえるとうれしい」とコメント。いやそれでも期待しちゃいますけどねやっぱり。
そして気になる大賞についてはなんと篠原先生自ら大賞を発表!
大賞は山口つばさ先生の「ブルーピリオド」!篠原先生からは「僕も美術大学出身で、高校の時に同じように美術の予備校に通っていたので、胃がキリキリ痛むような受験当日の感じとかあるあるがたくさんあって、汗をかきながら楽しませていただいております」との感想と祝辞が送られました。
会場には山口つばさ先生がカエルの覆面をかぶって登場。
本人曰く「カエルが好きで、Twitterアカウントもカエルなので」とのことなのですが、カエルの覆面ってこう、ミュージアムを思い出してしまってぞわっと来るな……。
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以下は質疑応答の中で個人的に面白かったものをいくつかピックアップします。
「彼方のアストラ」の感想は?
父親から「ブルーピリオドより面白いと言われて「なにくそ」と思って読んだけど、5巻読み終わったらベッドに五体投地するほど感動しました。お父さん見てるー?
マンガ大賞について
あこがれの賞で、いただけると思っていなかった。「ロシャオヘイセンキ」という映画を見て感動していたら担当からLINEで「マンガ大賞の大賞になったよー」の連絡があって、映画の感動とマンガ大賞の感動で感情が行方不明に。家に帰って喜びをかみしめました。
※「ロシャオヘイセンキ」はこちら。これほんといい映画なのでまた別途ブログ書く
映画 羅小黒戦記 (ロシャオヘイセンキ/THE LEGEND OF HEI) 公式サイト
https://heicat-movie.com/
マンガを書こうと思った最初の着想は?
新海誠先生の「彼女と彼女の猫」コミカライズ連載が終わって自分の連載考えるときに、担当から「売れる漫画を描く努力してね」と言われて、売れるマンガって何だろと考えた時に私の中ではファンタジーかスポ根だった。自分がずっと美術をやっていたので、美術の勉強をスポ根として描いてもいいかな、というのがきっかけ。
最初はボツで、それを何度も描き直して今の形に。
ネームが通ったときの感想は?
1回目の時にキャラクターが今とは違っていて、これだとあれだからもうちょっとこうしようね、というかんじで修正していき、これだったら連載してもいいかなという感じで通った。連載取ったというより、漫画家としてやっていけるかの不安が大きかったので、ああよかったという安心のほうが気持ちとしては大きかった。
「DQNが芸大を受ける話」というアオリだが、初期の短編もDQN感あるキャラクターだった。これは先生のフェチもある?
私のフェチも多分ある。ただ、ブルーピリオドに関しては「絵がうまい」みたいなイメージと真逆のキャラクターにしたいと思っていた。ヤンキーっぽい、イケイケで勉強もできて遊びもできるキャラ、というのが一番最初のきっかけ。
主人公の八虎くんは最初からこんなキャラクター?
今のキャラは何でもできて器用だが、最初の設定では周りの目を気にしすぎてあまり器用なほうではないというキャラクターだったので、そこはちょっと違うかも。
連載の回数によってページ数が違うのはなぜ?
アフタヌーンはページ数の制限がない。基本的に毎回それに甘えさせていただいて、話の中で一番面白いと思っている話にしたときのページ数にしています。ページ数は最後の最後全然決まらなくて、最後の最後でネーム修正したりとか、作画している途中でいらないかな、と削ることもある。
毎回大ゴマで描かれる作品が印象的だけれど、作品あってのストーリーなのか、ストーリーに合わせて作品を描いているのか
映画とか漫画とか見ていて名シーンだと思うのは、お話とシーンがかみ合うとき。なので基本的にはお話先行、それに合う絵を行間を残す形で伝えられる絵ってどういうのかなというのを考えているので、絵は後かもしれない。
学生や他の画家の作品も登場する。こういうのは他のマンガでは見られない
「とめはねっ!」もやっているので他にもあるとは思いますが、新しいことをやろうと思ったというより、私の絵がクセが強いので、他の差k品の個性や哲学や思考など細部に宿る部分は、私が真似して描いても伝わらないと思ったのでああいう形に。
掲載する絵画は先生から発注?
発注しているものもあるし、まとめて作品をお預かりして、ここにはこの絵が合うかな、とか、ネームちょっと変えてこの課題にしてこの絵を当てはめようとかやることが多い。皆さんすごく優しいので使っていいよという感じだけど、ネガティブなシーンで使うこともあるので、私としては心苦しいこともたまにはある
他の人の作品を内包した作品を書くプレッシャーというのはあるのでは
本当にその通りで、私より本当にうまい人ばかり。作品の作画の底上げしてくれてありがとうと思っている。ブルーピリオドは作中に出てくる作品多いので、アシスタントさんも含めて大人数のチームでやっている感じ。
受賞を誰に伝えたい?
父にはもう伝えたのでw、絵を提供してくださっている方とか作中には出てこないけど取材させていただいたり、協力してくださっている方々がたくさんいる。その人たちに向けて1ついい報告ができてよかったな。
主人公がヤンキーで天才、だけど強みとして戦略があるのがユニーク
最初から性格が決まっていたわけではなく、物語りを作っていく中でだんだん決まっていったというのがある。私は「絵の才能あるよね」と言われることが多かったが、才能ではなく理詰め、完全な理詰めじゃないけれど1つ1つやっていっている人もいるので、そういう人たちを押していきたいというのはあった。
マンガ家を志したきっかけ
元々漫画とかアニメは好きだけど、大学(東京芸術大学)に入って1年で何を描いていいかわからなくなった。好きだったものの原点に戻ろう、と簡単な漫画とかを書いているうちに漫画を描きたいな、となった。
芸大にいた経験がマンガにどう活きているか
経験というより、周りにそういう美術をやっている人がすごく多いという環境が1つこの漫画を書く上での自分の強み。すごく取材が必要な漫画なので、この取材を1からやるのはすごく大変。そういう意味でやってきた経験と友人たちが今の漫画に生かせている。
今でも取材に行っているが、すごく堅く取材に行くと言うより飲みに行こうよというかんじで話聞かせて、というのもすごく多い。現役芸大生とかも話を聞くと自分の時と全然違ったりして発見が多い。
今後の作品への豊富
ネタバレになってしまうので具体的には言えないが、今まで当たり前だと思っていたことってほんとうにそうなのかな、というのを掘り下げられたらいいなと思っている
モデルになった先生は?
完全なモデルではないけれど、自分が予備校でお世話になった先生の言っていることとかはモデルにさせていただいている
授賞式の模様は後日録画が配信されるらしいので、詳しく見たい人はそちらもどうぞ。
さあ、今年も始めます!マンガ大賞2020授賞式、間もなく開始です。
なお本年度はTwitter社のご協力をいただき、授賞式の模様を後ほど録画にてお送りする予定です。 pic.twitter.com/rxIUL8tATY
— マンガ大賞 (@mangataisho) March 16, 2020
授賞式終了後はノミネート作品の配点が描かれたリリースも配られました。この得点、大賞並みに面白い。2位は僅差でSPY×FAMILYだったのかー!
個人的な事前予想はこちら。
本命は前年2位だった「ミステリと言う勿れ」、対抗は前回がアストラだったこと踏まえて「SPY×FAMILY」、個人的には「まくむすび」で
— カイ (@kai4den) March 16, 2020
実のところ本命はミステリと言う勿れかブルーピリオドだと思っていたのですがTwitterだと文字数制限あるしいろいろ描くのもずるいかなと思ってすぱっと1つにしたらプルーピリオドが大賞でした。いや後から何言っても言い訳ですけれども。
とはいえブルーピリオドは毎回新刊楽しみにしている大好きな作品であり、美術の世界を丁寧に描いていて美術経験者からはリアル過ぎる! というくらい緻密な世界観なのに、美術を全然志していない自分にとってもその熱量についつい引き込まれてしまうスポ根マンガとしてもすばらしい。受賞を機にたくさんの人にこのマンガ読んでもらえるといいなと思います。
講談社 (2017-12-22)