お笑いを理論的に分析する「お笑い版バクマン。」なマンガ「ショーハショーテン!」が面白い


先日自分のポッドキャストでも語ったのですが、ジャンプSQ. 連載中のマンガ「ショーハショーテン!」がすごく面白く自分の中でも期待の新作なのでブログでも紹介。とりあえず第1話は無料で公開されているので、余計な説明不要でまず読んでみようという人は下記リンクからどうぞ。

ショーハショーテン!/SQ.新連載試し読み – 浅倉秋成/小畑健 | 少年ジャンプ+
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496578488609

誤解を恐れず端的に言うと、ショーハショーテン!は「お笑い版バクマン。」とでも言うべき、お笑いの頂点を目指す高校生2人の物語。作画を担当するのがバクマン。と同じ小畑健というところも共通しているし、天才的なネタを考える根暗キャラと、ひたすら明るい天才子役というバランス感も「バクマン。」のサイコーとシュージンを彷彿とさせます。

バクマン。との一番の違いは原作者で、バクマン。は「デスノート」などでも小畑健とコンビを組んでいた大場つぐみですが、ショーハショーテン!の原作は浅倉秋成という小説家が担当しています。ただ、売れるマンガの作り方をロジカルに分析する「バクマン。」同様、どういうお笑いが受けるのかという分析という本質はまさにバクマン。という感じ。

これ、他のジャンルに比べて相当難しいことに挑戦しているんですよね。スポーツマンガだったら「この人は強い」と説明するだけでいいし、バクマン。は作品ごと絵柄をかき分けたり、作中作品を作らなければいけないという大変さはあるけれど、それでも「このマンガは人気のマンガです」と説明すればある程度は成立する。

だけどお笑いは、作中で「これは面白い」として紹介したネタが面白くなかったら全然説得力が無いわけで、これは相当に難易度が高い。

しかしこの漫画のすごいのは、作中で出てくる具体例が実際に面白くて納得度が高いというところ。ネタバレは避けますが、特定のシーンにおいてどういうやり方をすれば会場を盛り上げられるか、というコンセプトと、それに沿って作られたネタがマンガでもしっかりおもしろい。中には自分が学生から社会人にかけて身につけた話術のコツみたいなのも含まれてて、嬉しいやらネタバレされて困るなという思いやらで複雑な気分になりました。

原作を担当している浅倉秋成さんのことは本作を読むまで存じ上げなかったのですが、コミック第1巻に掲載されたご本人のコラムによると、子どもの頃の夢は「漫画家」もしくは「芸人」で、小学校の文化祭でオリジナルのお笑いネタを披露したこともあるという筋金入りのお笑い好き。

気になって浅倉秋成さんの作品もいくつか読んでみたのですが、単著としては最新作と思われる「六人の嘘つきな大学生」がものすごい面白かった。就職活動をテーマとした作品なのですが、伏線とミスディレクションがこれでもかというばかりにちりばめられていて最後まで飽きさせないだけでなく、話の根幹である大学生の新卒採用については、就職活動で苦しんだ人なら誰でも共感してしまうのではないかというところに切り込んだ作品でもあり、ミステリーとしても就職活動を舞台とした群像劇としてもお勧めです。

「六人の嘘つきな大学生」 浅倉 秋成[文芸書] – KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000377/

なお、浅倉秋成さんが原作を担当した、本作の原型と思われる「ダブルアクト」という読切が、ジャンプSQ.の別冊版に掲載されていました。バックナンバー購入して読んでみたのですが、基本的なコンセプトは一緒ながらコンビの1人は女子高生だったり、作画が別の人だったりして読後感もかなり違う作品に。これ踏まえると、小畑先生の起用や主人公キャラをバクマン。に寄せてきたのも狙ってきてるっぽい。

ジャンプSQ. | ジャンプSQ.RISE 2020 AUTUMN 『ダブルアクト』原作:浅倉秋成 漫画:金丸栄一
https://jumpsq.shueisha.co.jp/sqrise/2020autumn/doubleact.html

10月発売のジャンプSQで連載開始したばかりで、コミック1巻も1月に出たばかりという作品ですが、今年のマンガ賞ではいいところに食い込むのではないかという期待の作品です。


ショーハショーテン! 1(BookLive!)

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ショーハショーテン! 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

なお、本作はコミックもいいのですがジャンプSQで読むのも楽しい。というのも3話のタイミングから、若手のお笑い芸人インタビューコーナー「芸人手帖」が4ページにわたって掲載されるようになり、この中身がまた面白いから。お笑いの話はもちろん、子どもの頃に好きだった作品と今好きな作品が必ずインタビューされていて、「この芸人はこの作品が好きなのか、だからこういう芸風なのかー」というつながりがすごく面白い。

【追記】芸人手帖はずいぶん前から掲載されているという指摘をいただきました。ショーハショーテン!の連載に合わせて各話の最後に掲載されるようになったってことなのかな。

第3話はキングオブコントに出た男性ブランコ、第4話は昨年のM-1である意味話題をかっさらったとも言えるランジャタイで、ランジャタイについてはM-1前にインタビューしたであろう内容がM-1後に公開されるというタイミングも最高すぎる。お笑い好きならこのコーナーのためだけにジャンプSQ.買うレベルです。


ジャンプSQ.(BookLive!)

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ジャンプSQ. 2022年2月号

ショーハショーテン!を含めてマンガについて語ったポッドキャストはこちらをどうぞ。


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